残業時間の切り捨ては、たとえ15分以内でも原則として違法です。残業代が正しく支払われていない場合は、会社に対し未払い残業代を請求するために、正しい金額を算出することから始めましょう。

本記事では、残業時間を15分単位で計算することの違法性や正しい残業代の計算方法、切り捨てが認められる例外などを解説しています。

残業時間を15分単位とするのは違法

会社から労働者に支払われる残業代は、原則として1分単位で計算しなければなりません。
15分単位や30分単位で残業時間を切り捨てて、残業代の計算を行うことは許さていないのです。

残業時間の切り捨ては、本来支払うべき残業代を支払っていないことになるため労働基準法違反に該当します。

なお、残業代を切り上げて計算することは、労働者にとって有利となるため認められています。

残業時間切り捨てによる未払いの罰則

残業時間の切り捨てによって残業代の未払いが発生した場合、会社は以下の法律に違反します。

労働基準法第37条:時間外・休日・深夜労働の割増賃金支払義務

法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える労働には、割増賃金を支払わなければならないと定められています。残業時間の切り捨てにより、割増賃金が適切に支払われないことになれば、違法行為となります。

上記の法律に違反した場合、会社は「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金(第37条違反)」を科せられる可能性があります。

残業代計算において切り捨て(切り上げ)が認められるケース

残業代の切り捨ては原則として違法であるものの、以下の場合は残業時間の端数処理が認められています 。

ケース1 1か月の合計の残業時間

1か月の残業時間(時間外労働・休日労働・深夜労働)の合計に1時間未満の端数が発生した場合は、30分未満を切り捨て、30分以上を切り上げすることは認められています。

例えば、以下のような端数処理です。
・1か月間の残業時間が10時間40分だった場合、残業時間を11時間として計算する
・1か月間の残業時間が10時間20分だった場合、残業時間を10時間として計算する

このような処理では労働者が不利になることはないため、残業代計算を簡便化する目的として導入されることが問題ないパターンです。

なお、切り捨てと切り上げは片方だけを行うことは許されず、必ず両方行う必要があります。さらに、端数処理に関するルールは社内で一貫した規程を定める必要があり、特定の状況よって残業代計算のルールを変更するなどの対応は認められません。

ケース2 1円未満の端数

1時間あたりの残業代を計算する際に1円未満の端数が発生した場合、50銭未満を切り捨てて、50銭以上を1円に切り上げることは認められています。

例えば、以下のような端数処理です。
・1時間あたりの残業代が2000.25円だった場合、2,000円を支払う
・1時間あたりの残業代が2000.75円だった場合、2,001円を支払う

ただし、1円未満の端数であっても「一律で切り捨てる」という端数処理は、労働者が不利になるため違法となります。

残業代の正しい計算方法

では、ここで残業代の計算方法について確認しておきましょう。

残業代は、以下の式によって計算します。
「残業代=1時間あたりの基礎賃金×割増率×残業時間数」

下記の契約内容で働く労働者が20時間残業した(深夜労働、休日労働は無いものとする)場合を例として、残業代を計算してみましょう。

・月給24万円(うち通勤費2,000円)
・所定労働時間10:00~19:00(うち休憩60分)
・年間休日110日
・残業代の割増率1.25倍

基礎賃金 240,000円-2,000円=238,000円
1年間の所定労働時間 (365日-110日)×8時間=2,040時間
1か月あたりの所定労働時間 2,040時間÷12か月=170時間
1時間あたりの賃金 238,000円÷170時間=1,400円

ゆえに残業代は「1,400円×1.25×20時間=35,000円」と計算できます。

より詳しい計算方法は、こちらの記事で解説しています。
「残業代の計算方法を分かりやすく解説(具体例付き)」

遅刻や早退をした場合に労働時間が15分単位で計算される場合

遅刻や早退の場合でも、労働時間は1分単位で計算されなければなりません。

例えば、始業時刻が9:00の会社で10分遅刻した場合、労働時間は9:10から計算します。
これを15分単位で考え、9:15からとして計算するのは違法です。

また、終業時刻の場合でも同様です。終業時刻が18:00の会社で17:35に早退した場合に、17:30まで勤務したとして残業代を計算することも違法となります。

就業規則に「残業時間は15分単位で計算する」と定められている場合

会社の就業規則などに「残業時間は15分単位で計算する」という規定がある場合でも、労働基準法に違反する内容である以上、そのような規定は無効となります。

繰り返しになりますが、残業時間は1分単位で計算しなければなりません。

残業時間が切り捨てられている場合、どうしたらいいか

未払いの残業代は、会社に対して請求することが可能です。残業時間の切り捨てが疑われる場合や勤怠管理が適切に行われていない場合は、残業代請求を検討しましょう。

残業代を請求するには、残業の証拠を揃えたり、未払いの残業代の金額を計算したりするなど、時間と手間のかかる作業が必要です。
また、会社側に弁護士が付いている場合、法的な根拠にもとづいて話ができないとあなたの主張は受け入れてもらえない可能性もあります。

その点、弁護士に依頼すれば、会社との交渉や必要な手続きは代理で行ってくれるため、あなたの手を煩わせることはありません。会社側に一方的な主張をされても、法的な根拠をもとに適切に反論することができるため、未払いの残業代を認めてもらえる可能性が高まるでしょう。

残業代を請求する方法や流れは、こちらの記事で解説しています。参考にご覧ください。
「残業代を請求する方法とその流れ|請求タイミングも解説」

まとめ

残業代は1分単位で計算することが原則です。15分単位で残業時間を切り捨てることは、労働基準法違反に該当します。

「残業代が正しく支払われていない」「計算方法が複雑でよくわからない」という場合は、まずは弁護士への相談を検討しましょう。正しい残業代の回収に向けて、手厚いサポートを受けることができます。

監修弁護士

勝浦 敦嗣(かつうら あつし)
執筆者:勝浦 敦嗣(かつうら あつし)
所属:第二東京弁護士会所属
-監修コメント-
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