外回りの営業職の場合でも、当然ながら残業代請求は可能ですが、①直行直帰の場合の労働時間の立証、②事業場外みなし労働時間制に対する反論、が議論となる場合が多いので、注意が必要です。
1 直行直帰の場合の労働時間の立証
残業代請求をする場合、原則として、労働者側が具体的な労働時間について立証する必要があります。タイムカードがある場合は、タイムカードの出社時刻、退社時刻からその日の労働状況を立証することが可能です。
ただ、外回りの営業職の場合、会社に出社せずに取引先に直行する場合、取引先の営業が終わった後に会社に戻らずに自宅に直帰する場合などがあるでしょう。その場合、タイムカードには打刻がないでしょうから、別の立証を考える必要があります。
翌日に上司に日報を提出し、その日報に勤務時間が記載されているケースなどは、日報に記載された労働時間をそのまま使うことが可能です。特に上司が承認印などを押している場合は、記載内容の正当性について会社もお墨付きを与えたことになりますので証拠としての価値は高いものと考えられます。また、取引先から帰る際に、会社にメールはLINEなどで報告している場合は、そのメール等の時間で労働時間を立証することも考えられます。
タイムカードがない場合でも、なにか労働時間を立証できるものがないかを検討すれば、意外と証拠が見つかる場合も多いです。
2 事業場外みなし労働時間性に対する反論
社外で活動する外回り営業職については、会社から「事業場外みなし労働時間制を採用しているので、残業はつかない」と主張される場合があります。
「事業場外みなし労働時間制」というのは、社外で活動し、会社が時間管理できない従業員について、実際の労働時間にかかわらず、一定時間働いたこととみなすという制度です。ただし、最近は、外回りの社員であっても携帯、スマホによる管理は容易ですから、「事業場外みなし労働時間制」が適用できるケースはほとんどありません。外回り営業職であっても堂々と残業代請求をすべきでしょう。
営業職勤務の方の未払い残業代の解決事例
外資系メーカー営業職
直行直帰が中心の外回り営業職だったため、事業場外みなし労働時間制であるとの主張がなされました。訴訟において180万円を獲得する和解が成立しました。
国内メーカー営業職
会社の指示によりタイムカードの打刻が適切になされていなかった事案ですが、交渉の結果、220万円の支払いを受けることができました。