「残業代を全額払っていたら会社がつぶれてしまう。そうなったら元も子もないだろう。」、「仕事が遅いから残業するんだから自己責任だろう。」……
残業代に対してこのような主張をする会社経営者もいます。
確かに、経営者の立場を考えれば、このような考え方も完全には否定しがたい面があるかもしれません。
しかし、会社は給料をサービスしてくれないのに、どうして社員は会社に自分の時間をサービスしなければならないのか…という疑問に正面から答えることはできないでしょう。
本来請求できるものを請求するのは当然のことです(もっといえば、会社が労働基準法を守るのは本来もっと当然のことなのですが。)。
社員が声を上げない限り、会社の考えは変わらないでしょう。とすれば、誰かが声を上げることが会社に対する圧力となり、ひいては社会全体の労働に対する考え方が是正されていくのだと思います。
労働者の権利は、労働基準法で厚く守られています。遵法意識の低さを経営者に突き付け、改善を求めるという意味でも、残業代請求には意義があるものと考えております。
なお、当事務所は労働者側の労働事件を中心に扱っていますが、経営者側に労務問題のアドバイスを行うこともあります。
矛盾する立場を兼ねるように見えますが、どちらの立場に立っても、法律上可能な範囲で依頼者のためにベストを尽くすという面では矛盾しないと整理しています。
このような整理は、労働者側弁護のみを取り扱うような弁護士や労働組合からは不徹底と言われるかも知れません。そういう意味では、当事務所は、政治的・イデオロギー上の偏りはありません。社会運動の手段として労働事件を取り扱うのではなく、個々の事案について依頼者のためにベストを尽くすことが弁護士の本分だと考えております。その上で、その結果として社会のアンバランスを正すことに寄与したいと望んでいます。