工場勤務は、長時間労働が蔓延しやすい仕事のひとつです。毎日2時間や3時間は工業に残って残業をしているという従業員の方は多いでしょう。
また、毎日残業しているにも関わらず、残業代が支払われていないというケースも少なくはありません。
では、工業勤務ではなぜ長時間労働や未払い残業代が発生しやすいのでしょうか。
また、未払い残業代を会社に請求することは可能なのでしょうか。
今回は、工場勤務における長時間労働と残業代について、わかりやすく解説します。
工場で長時間労働が蔓延しやすい理由
製造業をはじめとした工場勤務で長時間労働が蔓延しやすい理由としては、次のことが考えられます。
・タイトな納期
・労働力不足
・管理職には残業代が出ないという誤解
上記3つの理由について、詳しくみていきましょう。
理由1:タイトな納期
工場は、本部や発注企業のニーズと工場の生産能力を踏まえて案件を受注し、製品の生産を行います。しかし、特に下請けとして稼働している工場では、発注企業のニーズを優先しないわけにいかず、工場の能力に見合っていない生産量をタイトな納期で受けてしまう例が見受けられます。
このような場合、負担を被るのは工場で働いている労働者です。「納期がタイトだから」という理由で定時に退社することができず、労働者が残業を強いられるケースは、少なくないでしょう。
理由2:労働力不足
製造業は、慢性的な労働力不足という問題を抱えています。
経済産業省の調査によると、国内の製造業就業者数は、2002年には1,202万人でしたが、2019年には1,063万人と、大幅に減少。その数は、ここ20年間で11.6%減少したことになります。(注1)
一方、製造業の売上自体は横ばい。(注2) つまり、製造業では、仕事量はそのまま、それを担う労働者の数だけが減少しているのです。
このような背景により、製造業において労働力は不足し、労働者1人が担う仕事量は増加傾向にあります。それに伴い、残業しないと仕事が回らない状態になっている工場も多く見られます。
理由3:管理職には残業代が出ないという誤解
工場の中には「管理職には残業代が出ないからいくら残業させてもいいだろう」という考えから、役職を持つ労働者に対しサービス労働を強いて、長時間労働をさせているケースもあるようです。
しかし、この考えは間違いです。
労働基準法では、その労働者が「管理監督者」に該当する場合を除き、所定・法定労働時間を超えて働いた労働者には、割増賃金を適用した残業代を必ず支払わなければならないということが記されています。
「自分は名ばかり管理職かも?」と思われる方は、以下の記事をご覧ください。
工場勤務で未払い残業代が発生しやすい2つのケース
工場勤務では、本来支払われるべき残業代が支払われない「未払い残業代」が発生することもあります。特に多いのが、次のようなケースです。
ケース1:固定残業代制
固定残業代制とは、あらかじめ給与に一定時間分の残業代を含めて支給する制度のことです。この制度が正しく導入されている場合、給与に含まれる一定時間分の残業については、追加で残業代が発生することはありません。
しかし、その一定時間分を超えた残業に関しては、会社は追加で残業代を支払う必要があります。また、そもそも、固定残業代制度が正しく導入されていないケースも散見されます。
それにも関わらず、「固定残業代制だからどれだけ残業しても追加で残業代はもらえない・支払う必要はない」と勘違いしている労働者や事業者は存在します。
既に述べたとおり、固定残業代に含まれる一定時間分を超えた残業に関しては、残業代は発生します。これが支払われなかった場合、労働者は会社に対し未払い残業代を請求することが可能です。
ケース2:名ばかり管理職
前章でご紹介したとおり、残業代の支払いが免除されるのは、残業をした労働者が労基法上の「管理監督者」にあたる場合のみです。
「管理監督者」とは、経営者と一体的な立場で監督・管理の地位にある者のことを指します。その判断は役職名でなく、権限や采配、待遇といった業務実態から行われます。
具体的には、経営に関する決定権を持っている、自身の労働時間に対する采配を持っている、賃金面で優遇されているなどが、「管理監督者」の条件となります。
役職を持った労働者であっても、その業務実態が「管理監督者」に該当しない場合、会社は残業代を支払わなければなりません。しかし、業務実態が「管理監督者」に該当しないにも関わらず、労働者に役職を与え名ばかりの管理職とし、違法に残業代を支払わない例は、工場に限らず色々な業種で見られます。
工場勤務の方が残業代請求に成功した事例【勝浦総合法律事務所にて対応】
次に勝浦総合法律事務所で対応した、工場勤務の方が未払い残業代の請求に成功した事例をご紹介しましょう。
依頼者は工場に勤務する50代のご夫婦でした。
その工場では、ご主人が工場長、奥様が管理職として働き、それぞれの残業時間は1ヶ月で100時間ほど。日に換算すると、毎日3時間ほどの時間外労働を行なっていたことになります。
8ヶ月ほどの勤務でご夫婦は疲弊し、退職を余儀なくされました。
このご夫婦は、長時間労働を強いられていたにも関わらず「管理職だから」という理由で残業代を受け取れていませんでした。
しかし、業務実態は「管理監督者」に該当していなかったことから、会社に対し未払い残業代の請求を決意。ご本人保管のデータと訴訟による開示請求で会社から取得したデータを証拠とし、請求手続きを行いました。
この訴訟でのポイントは、「管理監督者」への該当性です。当事務所では、次の点からご夫婦が「管理監督者に該当しない」ことを主張しました。
・残業代が支給されない場合、パート従業員よりも安い時給になる
・人事考課に関する権限を有していなかった
・採用・解雇に関する権限を有していなかった
・仕事内容は、工場での作業という現業が中心だった
・昼夜を問わず業務を行うなど出退勤の采配を有していなかった
その結果、「管理監督者ではない」という見解を裁判官から得て、訴訟は和解に。ご主人は260万円、奥様は220万円の未払い残業代の支払いを受けることができました。
休日出勤には割増賃金が発生する場合がある
ここまで出勤日の残業について解説してきましたが、休日出勤においても、それに対する手当(残業代)は支払われなくてはなりません。
そもそも雇用における休日は、次の2種類に分類されます。
法定休日・・・労基法で定められている、最低週1回または4週間で4日以上の休日のこと
法定外休日・・・法定休日以外に会社で定めている休日のこと
どちらの休日における出勤の場合でも、手当(残業代)は支払われるべきです。
ただし、法定休日の出勤については、その残業代には35%以上の割増賃金の適用(その日に8時間以上働いても割増率の変更はなし)が義務付けられています。
一方の法定外休日については、割増率は適用されません。しかし、労働時間が週40時間を超えた場合には、25%以上の割増率が適用されます。
工場勤務の方が未払い残業代を請求する手順
最後に、工場勤務で残業代の未払いに遭った場合に、会社に残業代請求を行うための手順をご紹介します。
(1)未払い残業代を算出する
まずは、未払い残業代の具体的な金額を算出する必要があります。何時間の残業があり、そのうち各割増率が適用される残業は何時間か、タイムカードや勤怠データの情報をもとに算出していきましょう。
ただし、割増率が状況によって変わることもあり、残業代の計算は複雑です。正確な計算は、弁護に依頼することも検討しましょう。
(2)証拠を集める
未払い残業代の算出とともに、証拠集めも進めていきましょう。
残業代の請求には、残業の事実とその時間を確認できる証拠が必要です。代表的な証拠としては、タイムカードや勤怠データ、業務メール、日報、パソコンのログなどが挙げられます。
万が一、これらの証拠が自分の手元にない場合でも、諦める必要はありません。大半のケースでは、弁護士から会社への開示請求を行えば、証拠を得られます。
(3)会社に請求書を送付する
用意が整ったら、会社に内容証明郵便で請求書を送付します。
未払い残業代の請求には3年という時効がありますが、内容証明郵便を送ることで、この時効は一時的に止めることが可能です。
その後は、会社と協議を進め、交渉で合意に至らない場合には、労働審判や裁判で決着を付けることになります。
残業代請求は弁護士に相談を
未払い残業代の請求は、個人で抱え込むのではなく、弁護士にご相談ください。
弁護士に依頼すれば、複雑な手続きや会社との交渉は全て任せることができます。豊富な法的知識と実績を持つ弁護士が手続きを担えば、残業代請求の成功率は上がり、労働者自身の負担も軽減されるでしょう。
勝浦総合法律事務所では、未払い残業代の請求手続きをお引き受けしています。
当事務所の未払い残業代の回収実績は、年間7.5億円。これまで培ったノウハウで、残業代請求成功のため尽力いたします。
相談料・初期費用は0円なので、費用面が心配な方も安心。請求が成功した場合のみ、報酬をいただく形を採用しています。
どなた様も、まずはお気軽にご相談ください。
残業代請求ホームページ:https://katsuura-law.com/zangyo-dai/
【参考資料】
(注1): 経済産業省「第1節 デジタル技術の進展とものづくり人材育成の方向性」
(注2): 経済産業省 「製造業を巡る現状と課題今後の政策の方向性」
監修弁護士
監修者:勝浦 敦嗣(かつうら あつし)
所属:第二東京弁護士会所属
-監修コメント-
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