会社で残業代の未払いやハラスメントなどの問題行為を受けた時には、然るべき機関に相談する必要があります。そして相談できる機関として代表的なものは、労働基準監督署と弁護士です。

労働基準監督署では労働者からの相談を無料で受け付けています。また、多くの法律事務所でも無料相談を受け付けています。

では、労働基準監督署と弁護士の無料相談には、対応にどのような違いがあるのでしょうか。

今回は、労働問題の相談先としての「労働基準監督署」と「弁護士の無料相談」の違いについて、わかりやすく解説します。

 

「労働基準監督署へ申告」と「弁護士へ無料相談」の3つの違い

「労働基準監督署への申告」と「弁護士への無料相談」は、どちらも労働者が無料で労働問題について相談できるという点で共通しています。
しかしこれらには、「対応できる範囲」や「証拠用意の必要性」、「交渉や訴訟の対応」という点において大きな違いもあります。
ここでは、その違いについて詳しくみていきましょう。

対応できる範囲

労働基準監督署と弁護士では、相談について対応できる範囲が異なります。

そもそも労基署は、会社が労働基準法やその関連法に違反していないか管理・監督するための機関です。したがって労働者が相談できる内容も、基本的には会社が労働基準法に関連する法律に違反している点に限定されます。具体的には、会社による給与や残業代の未払いや有給休暇の取得拒否などが考えられます。

また、給与や残業代の未払いについて相談したとしても、労基署は会社に指導を行うのみで、実際に支払われていない給与や残業代を回収してくれるわけではありません。また、法的な争いがある事案については労基署はあまり積極的に指導をしてくれない印象があります。

 

一方の弁護士が対応できる範囲は、労働基準法関連の法律違反に限定されません。未払いの給与や残業代の請求はもちろん、労基署では対応してもらえないパワハラやセクハラなど、会社で発生したあらゆる問題に対応できます。
給与や残業代の未払い分については、労働審判や訴訟などの手続きを進めてもらうことが可能です。

弁護士の無料相談から実際に依頼するとなるとコストがかかってしまいますが、最終的な解決まで責任をもって対応してもらえるというのは弁護士に依頼するメリットだと思われます。

 

事前に証拠を用意する必要性

「労働者が事前に証拠を用意しなければならないか」という点でも、労働基準監督署への申告と弁護士への無料相談は異なります。

労基署への申告には、会社の法律違反を示す証拠が必要です。労働者自らがある程度の証拠を用意しておかなければ、労基署はなかなか積極的に動いてくれないと思われます。これは、労働者にとって大きな負担であり、申告のハードルを上げていると考えられます。

一方弁護士への無料相談では、労働者が事前に証拠を用意しておく必要はありません。依頼を受ければ、弁護士は証拠集めから対応するためです。

 

会社との交渉や訴訟

会社との交渉や訴訟を代理で請け負うことができるかどうかも、労働基準監督署と弁護士では異なります。

労基署は、会社に指導や是正勧告を行うことはあるものの、未払い給与や残業代を支払わせるために個別の労働者のための交渉を行う、といったことは行いません。そのため問題がある場合でも、基本的に労働者が自力で解決する必要があります。ただ、労基署は会社の労働者全員のために指導を行ってくれるため、会社の労働環境全体の改善という意味では労基署に動いてもらうメリットはあるかもしれません。

一方の弁護士は、依頼を受ければ、労働者に代わって会社との代理交渉を行うことが可能です。さらに、会社との交渉が決裂した場合には、労働審判や訴訟の手続きも担うことができます。

また、残業代の未払いやハラスメントを受けた労働者が、なるべく会社側と顔を合わせたくないと考えるのは当然でしょう。
弁護士に任せれば、労働者自らが直接会社側と顔を合わせて交渉などを行う必要はありません。

 

弁護士に依頼したほうがよいケース

前章でご紹介した対応の違いを踏まえると、「未払いの残業代請求」や「不当解雇」については、労基署に相談するよりも、弁護士に相談・依頼された方がよいように思います。

我々の経験上も、「労基署に相談したけど解決してもらえなかった」というご相談を多く受けます(もっとも、労基署に相談してうまく解決できた方は、重ねて弁護士に相談には来ないでしょうから、我々の経験自体、バイアスがかかっている可能性もあります)。

未払いの残業代請求

会社に対し、未払い残業代を請求したいと考えている場合には、労基署よりも弁護士に相談された方がよいと思います。

もちろん、労働基準監督署も残業代の未払いについて会社に指導をしてくれることはあります。ただ、その場合、特定の労働者のために動いてくれるわけではなく、会社の労働者全員のために、遡って残業代を払うようにとの指導がなされます。

我々の経験上、労働基準監督署が指導する残業代の額は、本来法律上認められる残業代よりも少ない場合が散見され、十分な回収には至らない場合が多いように見受けられます。また、固定残業代や管理監督者性など微妙な法的争点があるケースでは甘い処理がなされているケースが見受けられます。

他方、弁護士は、依頼した労働者のために徹底的に会社と交渉し、訴訟や労働審判などの法的手続きを行います。会社全体の労働環境を改善したいというのが主目的であれば労働基準監督署への相談もよいと思いますが、自身の未払い残業代をきちんと回収したいという目的の場合、弁護士に相談されるのがよいと思います。

不当解雇

不当解雇についても、労基署ではなく弁護士に相談された方がよいと思います。

労基署は不当解雇の相談を受けた場合、なぜか解雇を争うのではなく、解雇予告手当を1ヶ月分請求して終わらせるようなアドバイスをすることが多いようです。

実際に、多くの方から、労基署に相談したところそのようなアドバイスを受け、会社に対して誤った対応をしてしまっているケースが頻繁に見られます。

不当解雇についての労基署のアドバイスは鵜呑みにせずに弁護士に相談なさることをお勧めします。

 

よくある質問

労働基準監督署への申告については、「会社にバレるのでは?」「ペナルティがあるのでは?」と心配する方がいらっしゃいます。ここでは、これらの心配に対する回答をご紹介します。

労働基準監督署への申告は会社にバレる?

労働基準監督署へ申告したことが、会社にバレることは基本的にありません。なぜなら、労基署の監督官には守秘義務があり、申告者の情報を外部に漏らすことはできないからです。
身元を知られる心配なく申告できる点は、労基署を利用するメリットの一つでしょう。

ただし、労働者が自分で「労基署に申告した」旨を同僚や関係者に話してしまえば、会社にそのことを知られる可能性は高くなります。労基署への申告については、自分の身を守るため、労働者自身も口外を避けるべきです。

労働基準監督署に申告するとペナルティを受ける?

万が一労働基準監督署に申告したことが会社に知られてしまった場合でも、申告者の労働者がペナルティを受けるケースはほとんど無いでしょう。それは労働基準法第104条第2項にて、労基署に通報を行った従業員を、会社が解雇したり不当な扱いをしたりすることは固く禁じられているためです。
もし申告者に対し、会社側が減給や降格、雇い止め、嫌がらせなどの不当な対応を行った場合、会社は「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科される場合があります。

 

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サービス残業は違法です。未払い残業代については、後からでも会社に対し相当金額を請求することが可能です。

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相談料・着手金は0円で、成功報酬型なので初期費用は不要です。
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監修弁護士

勝浦 敦嗣(かつうら あつし)執筆者:勝浦 敦嗣(かつうら あつし)
所属:第二東京弁護士会所属
-監修コメント-
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