残業代請求では、労働時間を示す証拠が不可欠です。そのため運送業の残業代請求では、デジタコや運行日報などの証拠をもとに、労働時間を割り出すことになります。
しかし現実には、次のような会社の指示により、記録された労働時間が実態と異なるケースも少なくありません。
・「デジタコ・アナタコを切って運行してください」
・「待機時間や積卸し時間を、休憩と記録してください」
・「日報に記載された退勤時間が遅すぎるので、書き直してください」
このような指示により不正確な労働時間が記録されている場合、これらを残業代請求の証拠として使うのは難しいでしょう。
ではこうした記録の信頼性が欠けている場合、労働者はどのようにして残業代請求を行えばよいのでしょうか。代わりになる証拠はあるのでしょうか。
今回は、運送業でデジタコや日報が改ざんされている場合の残業代請求の手続きについて、わかりやすく解説します。
目次
運送業でよくある不正パターン
運送業では、会社の不正によって、残業代が正しく支払われていないケースが見られます。特に多いのは、次のような不正パターンです。
①デジタコ・アナタコを切って運行させられている
一部の悪質な運送業者では、「労働時間が長すぎる」「記録に残ると問題になる」という理由から、デジタコ・アナタコを切った状態で運行するように指示を出すケースがあります。
これは明らかに法令違反ですが、現実として当事務所が対応する残業代請求案件でも、このような事例は散見されます。
このようなケースで残業代請求を行う際に重要となるのは、「タコを入れずに走行した時間」をどのように立証するかです。
デジタコやアナタコの記録が存在しないため、他の手段で労働時間を証明する必要があります。
証拠が全くない場合は請求が難しくなりますが、在職中であれば、Googleタイムライン機能をオンにして通常通り勤務することで、実際の労働時間・走行状況をデータとして記録できます。
②荷待ち・積卸しなどの時間が「休憩」と記録されている
運送業では、荷待ち・積卸し時間が発生します。
会社によってはこの時間を「休憩」と記録するよう指示していたり、「待機」として入力された記録を管理者側で「休憩」に書き換えていたりするケースも存在します。
ここで争点となるのが、「荷待ち時間は労働時間になるのか」ということです。
荷待ち時間については、「トラックが停車しているから」「何も作業をしていないから」と、会社側が休憩時間であることを主張する例が見られます。過去の判例でもケースバイケースではあるのですが、「荷待ち時間は労働時間になるのか」は、以下のポイントが重要な判断要素になるとされています。
・車両から離れることができるか
・車両を監視しなければならないか
・自由に休憩時間として過ごせるか
・次の作業開始時刻が明確に決まっているか
上記のポイントに荷待ち時間の状況が当てはまる場合、トラックドライバーは一定の場所に拘束されており、休憩時間と呼べる自由な状況にはないといえます。その場合、荷待ち時間は休憩時間ではなく、労働時間として扱われるべきです。
「荷待ち時間は労働時間になるのかどうか」について詳しくは、「トラックドライバー必見!荷待ち時間は休憩時間?労働時間?」にて解説しています。
③日報・出退勤簿が改ざんされている
運送会社の中には、運転日報の作成や出退勤簿への記入をドライバーに義務づけている職場もあるでしょう。
しかし中には、業務日報や出退勤簿を鉛筆で記入させたり空白で提出させたりして、最終的に会社が都合の良いよう改ざんし、労働時間を不正に短縮しているケースが見受けられます。乗車前に行う点呼の記録を誤魔化してしまうケースもあるようです。
業務日報や出退勤簿の改ざんは、労働基準法に抵触する可能性があります。法律違反が認められた場合には、改ざんを指示した会社側に30万円以下の罰金が科されます。
会社による書類の改ざんで不利益を被った場合には、労働基準監督署や弁護士に相談し、今後の対応についてアドバイスを受けましょう。
デジタコや日報が改ざんされていても残業代請求は可能?
「改ざん」の内容や程度にもよりますが、デジタコの記録や日報に実際とは異なる記録がなされている場合でも、それによって直ちに残業代請求ができなくなるわけではありません。
会社側から提出されたそれらの記録が実態と大きく乖離している場合でも、他の労働時間を示す証拠と照らし合わせることで、記録の誤りを指摘できる可能性は十分にあります。
また、証拠の内容が一部実態と異なっていても、そこに一定の時間外労働の実態が記録されていれば、他の証拠と組み合わせることで、労働時間を示す有力な証拠になる可能性もあります。
このような法的な判断は、ケースによって大きく異なるため、まずは弁護士に相談し、アドバイスを受けることをおすすめします。
他の労働時間を示す証拠
デジタコや日報が改ざんされていても、それ以外のものを使って労働時間を示すことは可能です。証拠の具体例としては、以下のようなものが考えられます。
Googleマップのタイムライン機能
Googleマップには、GPSを使ったタイムライン機能が備わっています。この機能をオンにしておけば、「いつどこにいたか」を記録することができ、それは労働時間の証拠として活用することが可能です。また、ノートやメモのように意識的に記録する必要はなく、自動で客観的なデータが取得できるのも大きな利点です。
残業代請求を検討されている方は、まずはスマホのGoogleマップのタイムライン機能をオンにしておくことをおすすめします。
毎日の出退勤時刻を書いたメモ
出退勤時間や業務内容などを記した手書きのメモも、残業の証拠となる場合があります。
ただし気が向いた時に記録した不定期のメモでは、業務の全体像が把握しにくく、信用性も低くなります。
可能であれば毎日、退勤時間とともに当日のスケジュールや業務内容なども一緒に記載しておくと、証拠としての信用性が高まります。
残業代請求に有効なメモの取り方については、「残業代請求の証拠のために重要な「メモの取り方」の注意点5つ」にて詳しく解説しています。
LINEのメッセージ履歴
退勤前、家族や友人にLINEメッセージを送る習慣があれば、そのメッセージ履歴も残業の証拠として認められることがあります。
継続的な記録があるほど、証拠としては有効です。
当事務所が扱った事案でも、会社から開示されたデジタコが他人のものであることを、LINEに残された運行先の写真から立証できた事案などがあります。
その他
残業の証拠としては、デジタコや日報、また上記以外にも、以下のようなものが有効です。
・タイムカード
・シフト表
・車内無線の履歴
・車載カメラの記録
・高速道路の利用履歴
・アルコール検知記録
・携帯電話(スマートフォン)の利用履歴 など
ご紹介したような証拠は、なるべく多く確保しておくようにしましょう(もっとも、お手元に資料が残っていなくても、会社から開示を受けることが可能ですので、諦める必要はありません)。
また、未払い残業代請求にあたっては、会社の労働条件も確認する必要があります。そのためには、給与明細や雇用契約書なども用意しておくと良いでしょう。
各証拠の集め方については、「サービス残業の証拠の残し方|タイムカードがないケース等も解説」にて解説しています。
残業の証拠が無くてもOK
残業代請求にあたっては、サービス残業をしていた全期間の証拠を用意できないケースもあるでしょう。残業代請求の時効は3年ですが、3年間の証拠を漏れなく用意することは現実的に難しいです。
しかしそのような場合でも、残業代請求をあきらめる必要はありません。
たとえ手元になくても、会社に請求することで、資料を取得できますし、もし会社が資料の開示に応じない場合は、提訴の上裁判所から開示を命じてもらうこともできます。
【弊所の事例】トラックドライバーの残業代請求
ここからは、勝浦総合法律事務所で対応した、トラックドライバーの残業代請求の成功事例をご紹介します。
事例①東京都のドライバー2名
東京都の運送会社にてドライバーとして働いていた方2名から残業代請求のご相談を受け、勝浦総合法律事務所で対応しました。
交渉では会社側は残業代の支払いに応じず、手続きを裁判へ進めたところ、和解となり、2名合わせて1,800万円の回収に成功しています。
事例②青森県の30代ドライバー
青森県の運送会社でドライバーとして勤務していた方に、残業代請求のご相談を受け、勝浦総合法律事務所で対応しました。
当初会社は「運行手当という名目で残業代を支払っている」と主張。しかし裁判ではこの主張は認められず、結果的に和解となり、500万円の残業代回収に成功しました。
事例③神奈川県の40代ドライバー
神奈川県の運送会社でドライバーとして働いていた方が、会社による解雇を受けてご相談に来られ、勝浦総合法律事務所で対応しました。
裁判では「会社による解雇は不当なものであること」「支払われるべき残業代が支払われていないこと」を細かく指摘し、1,000万円の支払いをもって和解することができました。
事例④40代男性ドライバー
40代のトラックドライバーの男性から依頼を受け、勤務先の運送会社に対し残業代請求を行いました。
当方からタイムカード等の労働時間に関する資料の提出を求めたところ、相手方弁護士から速やかに資料が提出されました。その後和解の申し入れを受け、受任からわずか4ヶ月で約500万円の残業代を獲得することができました。
事例⑤50代男性ドライバー
トラックドライバーとして働く50代の男性が、長時間の残業をしているにもかかわらず、適切な残業代が支払われていないと、勝浦総合法律事務所に相談されました。
男性は多い月で200時間超の時間外労働をしており、その記録はデジタコに残っていました。これを証拠として会社と交渉を進めたところ、会社側は未払い残業代の支払いに応じ、ドライバーに350万円を支払いました。
事例⑥40代男性ドライバー
トラックドライバーの40代の男性から依頼を受け、会社に対し残業代請求を行いました。
男性は恒常的に長時間残業をしており、時間外労働が170時間を超える月もありました。デジタコに残業時間の証拠が残っており、結果として350万円の未払い残業代回収に成功しました。
トラックドライバーの残業代請求は勝浦総合法律事務所へ相談を
勝浦総合法律事務所では、トラックドライバーとして働く方の未払い残業代請求に力を入れています。豊富な残業代請求の実績を持つ弁護士が、会社との交渉はもちろん、証拠集めから残業代の計算まで、手厚くサポートします。訴訟や労働審判の手続きも、安心してお任せください。
弊所では、相談料・着手金0円の完全成功報酬制を採用しているため、費用面での心配は不要です。
残業代が適切に支払われていないという方は、まずは無料相談をご利用ください。
監修弁護士
執筆者:勝浦 敦嗣(かつうら あつし)
所属:第二東京弁護士会所属
-監修コメント-
「解決したはいいけど、費用の方が高くついた!」ということのないように、残業代請求については初期費用0円かつ完全成功報酬制となっております。
成果がなければ弁護士報酬は0円です。お気軽にご相談ください。
