残業代の未払いについては、飲食店に勤務されている方からもご相談を受けることがよくあります。
店長・マネージャーだからと残業代なしで長時間労働させられたり、閉店後に無給で仕込みや片付けをさせられたりしていませんか?このような場合、労働者は店に対し、未払い残業代を請求できる可能性があります。

 

実際に弊所で行った残業代請求の結果

まずは勝浦総合法律事務所でお引き受けした、飲食店への未払い残業代請求の事例をご紹介します。

カフェ店長

カフェの店長として働く方から残業代の未払いについてご相談を受け、会社を提訴するとともに、タイムカードの開示も求めました。会社側は「店長は管理監督者であるから残業代は出ない」と主張しましたが、裁判所は管理監督者性を否定しました。
結果として、会社が800万円を支払うことで、本件は和解となっています。

ビストロシェフ

ビストロでシェフとして働く方から「残業代が支払われていない」とのご相談を受けました。しかし会社は、「固定残業代制を取り入れている」と主張し、争う姿勢を見せました。
結果として、裁判所はシェフ側の主張を概ね認め、会社が450万円を支払うことで和解となっています。

居酒屋店員

居酒屋で店員として働く方から、残業代の不払いについてご相談を受けました。
会社は固定残業代制を導入していると主張してきましたが、「固定残業代部分の金額が180時間分に上り、不当に大きすぎる」と反論しました。
結果として、こちら側の主張が認められ、最終的には会社からの320万円の支払いをもって、和解となりました。

和食料理店3名

和食料理店に勤める3名の方から、未払い残業代請求のご依頼を受けました。
当初の交渉では会社から誠意ある対応を得られず、手続きを訴訟に進めましたが、最終的には和解となり、会社から合計900万円を回収することとなりました。

和食料理店の副料理長

和食料理店で副料理長として働く方から、無給の長時間労働についてご相談を受けました。依頼者は毎日15時間もの労働を強いられていましたが、会社は適切な残業代を支払っていませんでした。
会社側は有名店ということもあり、裁判を避けるべく早期に支払いに応じていただきました。結果として、未払い残業代285万円の支払いをもって、本件は解決しています。

寿司店店員

寿司店にて勤務されていた方から、「未払い残業代を請求したい」とご依頼を受けました。
タイムカードのデータがない日が多くあったことから、本件では実際の労働時間が争点となりました。弊所弁護士は可能な限り証拠を収集し、訴訟を進めました。
その結果、会社から270万円の支払いを受けることで、和解が成立しています。

居酒屋店員

居酒屋で店員として働く方から、「適切に残業代が支払われていない」とご相談を受けました。
その店ではタイムカードがなく、従業員の出退勤は手書きで管理されていました。ただその管理は正確ではなく、実際の労働時間よりも短い時間が記入されていました。

交渉にて十分な資料の提示がなかったため訴訟をし、結果として、和解により500万円の回収に成功しました。

 

よくある店側の反論と対処法

飲食店への残業代請求では、店側の反論に典型的なパターンがあります。

・「固定残業代を既に支払っている」
・「業務委託だから残業代は出ない」
・「管理監督者だから残業代は出ない」

上記の反論とその対処法について、詳しく見ていきましょう。

「固定残業代を既に支払っている」

会社側が「固定残業代制だから、追加で残業代は出ない」と反論をするケースは少なくありません。
しかし固定残業代を適用するには、下記のようなルールに従う必要があります。

・「入社時点の就業規則や労働条件通知書等に固定残業代制を採用する旨を明記すること」
・「基本給が最低賃金を下回らないこと」

これらのルールが守られていない場合、裁判などで「固定残業代制は無効」と判断される可能性があります。
まずは、会社が固定残業代制の要件をクリアしているか確認すると良いでしょう。

固定残業代の要件については、以下の記事でも詳しく解説しています。
固定残業代とは?違法か判断する4つのポイントと残業代計算方法

 

「業務委託だから残業代は出ない」

「業務委託だから残業代は出ない」と会社が主張するケースも、よく見られます。

確かに業務委託では、雇用と異なり、残業代が発生しません。
ただし、業務委託とするためには、受託者に業務遂行の裁量を与える必要があります。
委託者が業務遂行に際して、受託者に指揮命令を行っているような場合、その関係は業務委託ではなく雇用であると判断されることがあります。

実際の労働状況が雇用に該当するにもかかわらず、会社が残業代の支払い等を免れるため、業務委託を「偽装」することがよくあります。
ただし「実質的に雇用関係である」という主張は立証が難しいため、まずは弁護士などの専門家に相談されることをおすすめします。

業務委託か、雇用された労働者かを決める主な判断基準は8つほどあります。下記の記事にて詳しく解説しています。

業務委託の残業代請求|労働者性の8つの判断要素を徹底解説

 

「管理監督者だから残業代は出ない」

「管理監督者」を理由にした残業代の不払いも珍しくはありません。
法律上の管理監督者とは、「労働条件の決定や労務管理等について経営者と一体的な立場にある者」のことを指します。管理監督者に該当する者は、基本的に残業代の支払い対象にはなりません。

ただし、この管理監督者への該当性は、役職名ではなく業務実態から判断されるものです。
店長やマネージャーなどといった役職に就いているからといって、管理監督者に該当するとは限りません。
権限や裁量、待遇の実態が管理監督者に該当しない場合には、たとえ役職者であっても、残業代が支払われるべきです。

管理監督者の該当性についての判断要素は、以下で詳しく解説しています。
管理職の残業代、出る?出ない?その判断のポイントは?

「管理監督者ではないことの立証」は法的な議論が必要になるため、まずは弁護士の無料相談等を利用することを推奨します。

 

こんな時間も請求対象になる

弊所では飲食店への残業代請求を数多く行ってきましたが、「労働時間として扱われない時間」には一定のパターンがあります。

開店前の仕込みや準備時間

飲食店における労働時間は、店がオープンしている時間に限りません。会社の命令のもと、開店前に仕込みや準備をしている時間も、当然労働時間です。

完全に自由とは言えない休憩時間

休憩時間とは、使用者の指揮命令下から自由である時間を指します。例えば「休憩中に掃除をしておいて」「休憩のついでに買い出ししておいて」と依頼されるなど、完全に自由とは言えない休憩時間は、法的に休憩時間とは認められず、労働時間となります。

閉店後の片付けや清掃

飲食店の閉店後には、片付けや清掃をすることが多いでしょう。会社の命令を受けて行う閉店後の業務時間も、労働時間に該当します。

食材や備品の買い出し時間

食材や備品の買い出しのため外に出ている時間も、労働時間となります。

メニュー作成や会議の時間

飲食店では、メニューの作成や会議を営業時間外で行うケースがよく見られます。
これらの時間も労働時間であり、賃金が支払われるべきです。

 

残業代請求で有用な証拠一覧

会社に対し未払い残業代請求を行うためには、労働者側で残業の証拠を用意する必要があります。
残業代請求にてよく使用される証拠には、以下のようなものがあります。

タイムカード

従業員の勤怠管理にタイムカードを用いている飲食店は多いでしょう。
出勤時間や退勤時間が打刻されたタイムカードは、労働時間を証明する証拠として有効です。

PCの勤怠システムのデータ

パソコンに勤怠システムが導入されている場合は、システムに保存された勤怠データも、労働時間を客観的に証明できる証拠となります。

Googleマップのタイムライン機能

スマホのGoogleマップアプリには、位置情報をリアルタイムで記録する「タイムライン機能」があります。この機能をオンにしておくだけで「いつどの場所にいたか」というデータを溜めて、後から遡って見返すことができます。タイムライン機能によって店にいた時間がわかれば、労働時間の推定に役立ちます。
残業代請求を考えている場合は、Googleマップのタイムライン機能をオンにしておきましょう。

シフト表

出勤日時がわかるシフト表があれば、実際の労働時間を示す有力な証拠となります。
ただしシフトとは別に発生した残業については、シフト表で時間を確認できないので、別途証拠が必要になります。

日報

その日の業務について記載した日報も、残業の証拠となる可能性があります。
毎日の業務内容(食材注文や調理、清掃など)について詳しく書かれていれば、証拠としての信憑性が高まります。

建物の入退出記録

建物への入退出記録(カードでの入退室ログ、もしくは用紙への記入など)があれば、その記録も証拠となります。建物の入退室の時間がわかれば、出勤・退勤の時間も推測することができます。

退勤時に送った帰宅メッセージ

家族や友人に対し、退勤時にその旨をメールやメッセージで伝えている場合には、その履歴も証拠として認められる場合があります。

ただし、帰宅メールやメッセージについては、継続性が重視されます。たまに送る不定期なメール・メッセージでは証拠として認められない可能性があるので注意しましょう。

メモや日記

出退勤時間や業務内容について、労働者自身がメモや日記を残している場合、それらも残業の証拠となる可能性があります。
毎日欠かさず、労働時間や業務内容について詳しく書いているという場合は、有力な証拠となる場合があります。

交通系ICカードの記録

通勤時に交通系ICカードを使っている場合には、ICカードの利用履歴も残業の証拠となる可能性があります。ICカードの利用履歴から、最寄駅の改札通過時間がわかれば、労働時間を推定することができます。

 

証拠が少ない場合の対処法

「証拠が無いから、残業代請求は無理か・・・」と諦める必要はありません。

例えば、そもそも勤務時間を管理するシステム(タイムカードやPC勤怠システムなど)が導入されていない、という場合であれば、日報やGoogleマップのタイムライン機能の記録などから、労働時間を推定することができます。

また証拠がない場合、弁護士に相談するのも有効です。
無料相談の中で、思ってもみなかった意外な証拠が見つかることも少なくありません。
また弁護士に残業代請求を依頼すると、開示請求によって会社が有している証拠を提出させることもできます。

特に飲食店の場合、客観的な証拠が用意できなくても、営業時間から労働時間が推定できる場合もありますので、証拠がないからと諦めず、まず弁護士の無料相談をご利用いただくことをおすすめします。

 

残業代の計算方法

未払い残業代請求を行うときには、請求する残業代の具体的な金額を計算する必要があります。残業代の基本的な計算式は、以下のとおりです。

残業代=基礎賃金(1時間あたりの賃金額)×割増率×残業時間

ここで注意したいのが、残業時間や時間帯によって割増率が変わる点です。割増率には、下記のような種類があります。

・法定時間外労働(1カ月60時間以内の時間外労働):25%以上
・法定時間外労働(1カ月60時間超の時間外労働):50%以上
・深夜労働(22時〜5時):25%以上
・休日出勤:35%以上

例えば、法定時間外労働(1カ月60時間以内)かつそれが深夜労働である場合には、割増率は50%以上(25%+25%)必要になります。

より詳しい残業代の計算方法は、下記の記事をご覧ください。

残業代の計算方法を分かりやすく解説(具体例付き)

 

未払い残業代請求の進め方

未払いの残業代請求は、以下の手順で進めていきます。

①残業代の時効を中断
②証拠を収集
③残業代の計算・交渉
④労働審判・訴訟

①残業代の時効を中断

未払い残業代の請求権には、「その残業代を含む給料日の翌日から3年」という時効が存在します。時効を過ぎると請求権は消滅していってしまうため、まずは時効を止めなければなりません。

会社に対し未払い残業代を請求する旨の通知(催告)を行うことで、時効を一時的に中断させることができます。
催告の方法は内容証明郵便によることが一般的ですが、残業代を請求した事実と日付が証明できれば、LINEやメール、会話の録音などでも構いません。

②証拠を収集

次に、残業の事実や残業時間を証明できる証拠を収集します。
前述した労働時間を示す証拠のほかに、雇用契約書や就業規則などの労働条件に関する証拠も確保しましょう。

 

③残業代の計算・交渉

証拠をもとに未払い残業代の金額を計算します。
状況によって適正な割増率を適用しながら、会社に請求する具体的な金額を算出します。
ここまでの準備が整ったら、会社との交渉を行います。

④労働審判・訴訟

交渉で解決できなかった場合には、手元にある証拠や会社の出方などを考慮し、労働審判または訴訟へ進むことがあります。
労働審判・訴訟のどちらを選ぶべきかは、個別のケースによって大きく異なります。

例えば手元に十分な証拠があり、かつ会社が支払いになかなか応じないという場合は、労働審判を経ず、即座に訴訟をしたほうが、時間を短縮できることがあります。

また手元に証拠があまりなく、かつ相手が残業代の支払いに前向きである時には、交渉や労働審判で決着をつけるほうがよい、ということもあります。

この判断は個別の事情によって大きく異なるため、弁護士への無料相談の際に相談してみましょう。

 

弊所に依頼する際の費用

勝浦総合法律事務所では、未払い残業代請求に力を入れています。弁護士への依頼には費用がかかりますが、手続きを一任できるため、依頼者本人の負担を大きく軽減することが可能です。

弊所へご依頼いただいた場合の費用は、以下のとおりです。

・相談料:0円
・着手金:0円
・成功報酬:交渉での解決・・・・・回収額の19.8%(税込)
・労働審判での解決・・・回収額の26.4%(税込)
・訴訟での解決・・・・・回収額の33.0%(税込)

弊所では、「弁護士費用のほうが高くついてしまった・・・」ということが起こらないよう、上記のような初期費用無料の完全成功報酬制でご依頼をお受けしています。

 

何かご相談したいことがあれば、お気軽にお問い合わせください

弊所は労働問題に関するご依頼を数多く受けてきましたが、その中でも「残業代請求」に特に力を入れています。
飲食店への残業代請求にも複数の実績がございます。

「請求できる見込みはあるか?」「管理監督者に該当するか?」「証拠が無いけど、どうすればいい?」など、疑問・不安な点がありましたら、お気軽にご相談ください。

残業代請求に関する無料相談のご案内ページへ >>>

 

監修弁護士

勝浦 敦嗣(かつうら あつし)執筆者:勝浦 敦嗣(かつうら あつし)
所属:第二東京弁護士会所属
-監修コメント-
「解決したはいいけど、費用の方が高くついた!」ということのないように、残業代請求については初期費用0円かつ完全成功報酬制となっております。
成果がなければ弁護士報酬は0円です。お気軽にご相談ください。