警備員のシフトでは、休憩・仮眠時間が設けられていることがあります。
ただ警備員という仕事の性質上、休憩と業務の境目があいまいになることも多く、実際には休憩中であっても気を張って警備にあたっている、という方もいらっしゃるでしょう。
実は「呼び出しがあれば緊急対応を求められる」という場合、その休憩・仮眠時間全体が労働時間とみなされることがあります。
よくあるのが「労働者が休憩・仮眠の時間をすべて労働時間とみなして、未払い賃金を会社に請求する」といったケースです。
警備員は他の業種よりも休憩時間が長いことが多く、この時間をすべて労働時間とすると、請求額が非常に高額になることもあります。
(弊所で行った事案でも2名合計で3700万円と非常に高額な金額を獲得しております)
この記事では、休憩・仮眠時間が労働時間とみなされる場合の判断基準や、弊所で実際に行った請求事例についてご紹介します。
目次
休憩・仮眠時間でも、対応する必要があれば労働時間
休憩・仮眠時間が労働時間に該当するかどうかは、「その時間中に業務に従事しなければならない可能性があるかどうか」によって異なります。
例えば、「休憩・仮眠時間であっても、呼び出しがあった際には即時対応を求められる体制であった」と認められる場合、裁判例などでは、その休憩・仮眠時間の全体が労働時間とみなされることもあります。
根拠となる過去の判例でも、「不活動仮眠時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである(参考:大星ビル管理事件 最高裁判所第一小法廷判決 平成14年2月28日民集56巻2号361頁)」との判断がなされています。
このような議論において重要な要素となるのが、「呼び出しの頻度」です。
たとえば、休憩・仮眠中に呼び出されたことが「これまで一度もない」あるいは「数年に一度程度」というように極めて稀であれば、労働時間とは認められにくくなります。
これに対し、「週に一度」や「月に一度」など、ある程度の頻度で呼び出しがある場合には、仮眠・休憩時間であっても労働時間と評価される可能性が高くなります。
この「労働時間に当たるか」という判断は、実際の勤務実態を過去の裁判例に照らし、慎重に行う必要があります。
弁護士の無料相談などを活用し、自身の休憩時間が労働時間に該当するかどうかを確認してみるのも一つの方法です。
休憩・仮眠時間の賃金3700万円を回収した事例(勝浦総合法律事務所)
勝浦総合法律事務所では、警備員の休憩・仮眠時間に対して支払われていなかった賃金を回収すべく、訴訟を提起し、2名で約3700万円の回収に成功した事例があります。
弊所では未払い賃金・残業代請求を多数扱っておりますが、この金額は弊所でもかなり高額な部類に入ります。
病院で夜間警備員として働く2名の方から、「休憩・仮眠時間中の給料が支払われていない」とご相談を受けました。依頼を受け、弊所弁護士が交渉を行ったものの、相手方は譲歩の姿勢を見せず合意できなかったため、訴訟を提起しました。
争点は、「休憩・仮眠時間は労働時間に該当するかどうか」。
実態としては、休憩・仮眠時間中であっても、警備員は病院の周回業務や患者の急変対応を行わなければなりませんでした。これを受け、弁護士は「休憩・仮眠時間中も使用者の指揮命令下にあった=労働時間である」ことを主張しました。
結果として、相手方が警備員2名に対し約3700万円を支払うことで和解となっています。
警備員という職種は長時間労働が常態化しやすく、未払い賃金の温床となっているケースも少なくありません。
「自分の休憩・仮眠時間は本当に休憩といえるのか?」「本来、支払われるべき賃金があるのでは?」と疑問をお持ちの方は、弁護士に聞いてみることをお勧めします。
警備員の休憩・仮眠時間について争った判例
警備員の休憩・仮眠時間について争った判例は複数存在します。ここでは、公刊されている裁判例の中から、未払い賃金の回収に成功した判例と失敗した判例を一つずつご紹介します(当事務所が担当した事案ではありません)。
①成功した判例(大星ビル管理事件)
【概要】
ビル管理会社に所属する警備員10名が、会社に対し、24時間勤務の休憩・仮眠時間について支払われていない賃金の差額支払いを求め、提訴しました。
24時間勤務にあたっては、休憩時間が2時間、仮眠時間が8時間与えられていましたが、警備員らは仮眠室で仮眠していても、警報が鳴るような事態があれば即座に対応するよう求められていました。会社は業務が生じた場合のみ時間外手当・深夜手当を支給し、基本的には休憩・仮眠時間を労働時間として扱っていませんでした。
【ポイント】
・警備員らは仮眠時間中も、警報が鳴ったり電話がかかったりした場合には、それに対応し業務に従事する必要があった
・仮眠時間中に作業が生じた場合のみ、時間外手当・深夜手当が支払われていた
【判決】
一審・二審を経て、最高裁は、「不活動仮眠時間であっても労働からの解放が保障されていない場合には労基法上の労働時間に当たるというべきである。」とし、このケースでは警備員らは「労働からの解放が保障されているとはいえず、労働者は使用者の指揮命令下に置かれているというのが相当である」と判断しました。結果として、「仮眠時間が労働時間に該当する」ことを認めています。
(大星ビル管理事件 最一小判平成14年2月28日 全基連 ID:07920)
②失敗した判例(ビル代行事件)
【概要】
ビルメンテナンス会社で勤務していた元警備員らが、仮眠時間についての時間外手当の支払いを求めて会社を提訴した事案です。
警備員らは24時間勤務にあたって、4時間の仮眠時間を与えられていました。警備業務は4人一組で行っていたため、2名ずつ仮眠室にて仮眠を取る形となっていました。
また、この仮眠室には内線電話が設置されており、警備本部と連絡が取れるようになっていました。
【ポイント】
・4人一組で2名ずつ仮眠を取ることができた
・何か問題が起きたときには仮眠者が対応しなければならない可能性があった
・ただ実際には、仮眠者が業務に対応したことはなかった
【判決】
第一審(東京地方裁判所)は、仮眠時間について「労働時間に該当する」と認定しました。
しかし、会社側の控訴を受けた控訴審(東京高等裁判所)では判断が覆され、仮眠時間は労働時間に該当しないとされました。
東京高裁はその理由として、下記を挙げました。
・実際に仮眠中に業務が発生したことはなかったこと
・業務量が少なく、仮眠中の対応が求められる可能性も極めて低かったこと
このため「仮眠時間中に労働に従事することは皆無に等しく、例外的に労働時間とは認められない」と判断しました。
(ビル代行事件 最三小決定平成18年6月13日 全基連 ID:08491)
「呼び出しや対応の可能性がある」という状況であれば、休憩・仮眠時間であっても労働時間と認められるのが原則です。
しかし、実際の勤務実態として呼び出しが一度も発生していないような場合には、「例外的に労働時間とみなさない」という判断が下されることもあります。
請求時に集めるべき証拠
休憩・仮眠時間における賃金の支払いを求めるためには、「休憩・仮眠時間をいつどれだけ取ったか」を証明する証拠に加え、「休憩・仮眠時間に呼び出しの可能性があったことを示す証拠」も確保する必要があります。
例えば、以下のようなものが証拠として有効です。
・タイムカード
・勤怠データ
・シフト表
・業務マニュアル
・業務日報・報告書
・雇用契約書
・就業規則
タイムカードや勤怠データ、シフト表は、実際の出勤・退勤時間や休憩・仮眠時間の有無・長さを示す証拠として使用できます。
また、業務マニュアルなどにもし「休憩・仮眠中でも呼び出しがあれば対応すること」といった記載がある場合、実質的に労働時間であったと主張する根拠になります。
加えて、業務日報・報告書にて実際に緊急対応を行った記録が残っていれば、呼び出しの頻度や内容を裏付ける強力な証拠となります。
さらに雇用契約書や就業規則には、休憩・仮眠時間の賃金支給の有無や手当の取り扱いが明記されていることが多く、労使間の合意内容を確認する上で重要です。
弊所は警備員の未払い賃金請求に自信があります
勝浦総合法律事務所では「警備員の休憩・仮眠時間の未払い賃金請求」に関し、過去に約3,700万円の高額請求に成功した事例があります。
争点はやはり「休憩・仮眠時間が労働時間に該当するか」という点でした。この点をどう立証するかが、請求成功のカギとなります。
たとえば以下のような方法で立証していくことになります。
・業務マニュアルを用いて、休憩・仮眠中であっても緊急対応が求められる体制であったことを示す
・業務日誌や日報から、実際に発生した緊急対応の内容や頻度を明らかにする
・その他、複数の資料や証言から総合的に立証を図る
証拠が手元に無いという場合は、弁護士が会社に対し、証拠の開示を求めることが可能です。
会社が資料の開示を拒む場合には、訴訟を提起し、裁判所を通じて文書提出命令を申し立てることもあります。
未払い賃金請求の成否は、交渉や訴訟を担当する弁護士の経験と実力に大きく左右されます。
勝浦総合法律事務所では、豊富な実績と専門知識を有する弁護士が、法的アドバイスから証拠収集、交渉・訴訟対応まで一貫してサポートいたします。
まずは無料相談フォームから、お気軽にご相談ください。
勝浦総合法律事務所の弁護士費用
勝浦総合法律事務所では、未払い賃金・残業代請求の費用を、完全成功報酬制で頂いております。初期費用は0円、相談料や着手金は無料でご依頼いただけます。
お支払いいただくのは、請求が成功した場合の成功報酬のみです。その金額は以下のとおりです。
・交渉で解決した場合:回収額の19.8%(税込)
・労働審判で解決した場合:回収額の26.4%(税込)
・訴訟で解決した場合:回収額の33%(税込)
※証拠が十分でなく立証が困難なケース、請求額が少ないケースなど一部のケースでは異なる扱いをさせていただく場合があります。
回収額の〇%という形で頂いておりますので「弁護士費用の方が高くなってしまった…」ということがありません。
未払い賃金・残業代にお悩みの方は、ぜひ勝浦総合法律事務所へご依頼ください。
「未払い賃金があるのか」「どんな証拠を集めれば良いか」などの不安や疑問についても、お気軽にご相談いただけます。
まずは無料相談フォームをご利用ください。
監修弁護士
執筆者:勝浦 敦嗣(かつうら あつし)
所属:第二東京弁護士会所属
-監修コメント-
「解決したはいいけど、費用の方が高くついた!」ということのないように、残業代請求については初期費用0円かつ完全成功報酬制となっております。
成果がなければ弁護士報酬は0円です。お気軽にご相談ください。
