日本では、保育士の数が慢性的に不足しています。一人の保育士が担当する子どもの数は非常に多く、また保育以外の付随業務も多いことから、保育士の残業が常態化している保育園は少なくありません。

当然ですが、残業をした場合には相当の残業代(割増賃金)が支払われる必要があります。しかし実際には残業代が支払われず、保育士がサービス残業を強いられているケースも見受けられます。実際、退職後に残業代請求を行う保育士の方は数多く見受けられます。

そこで今回は、保育士が未払い残業代の請求をする場合の手順について、わかりやすく解説していきます。

 

保育士の残業代請求の6ステップ

残業代請求は、以下の6つのステップで手続きを進めていきます。

①証拠を集める
②残業代を計算する
③内容証明郵便を送付する
④会社と直接交渉する
⑤労働審判・裁判を行う

まずは残業の証拠を集め、それをもとに請求する残業代を計算したら、会社(今回の場合は保育園や運営団体)に内容証明書を送り交渉を行います。そこからは証拠や状況次第ですが、労働審判・裁判などの法的な手続きに移ることもあります。

手順が多く複雑に思える残業代請求の手続きですが、弁護士に依頼すれば、これらの手続きは代理で進めてもらうことが可能です。
それでは、各手順を詳しく見ていきましょう。

①証拠を集める

保育園や運営団体に対し、未払いの残業代を請求する際には、残業の事実を示す証拠を用意する必要があります。
残業代請求にあたっては、以下のような資料が有効な証拠となります。

・就業規則
・雇用契約書
・タイムカードの写し
・出勤簿の写し
・Googleマップのタイムライン機能
・パソコンのログイン/ログアウトの履歴が分かるもの
・業務日報
・業務をした時間が分かるメールのログ
・日々の出退勤時間を記載したメモ
・家族に送ったメール
・上司との会話を録音した音声記録(ボイスレコーダーなど)

有効な証拠が多ければ多いほど、残業代は請求しやすくなります。上記の資料はもちろん、ちょっとしたメモや交通系ICの履歴なども、しっかり証拠として確保しておくようにしましょう。
各証拠に関する詳しい説明は「サービス残業の証拠の残し方」を参考にしてください。

タイムカードがなくても大丈夫?

職場にタイムカードがないというケースもあるでしょう。
タイムカードは労働時間の把握に役立つ資料ですが、それが無いからといって残業代請求ができなくなる、というわけではありません。タイムカードに代わる客観的な証拠が他にあれば、問題なく残業代請求は行えます。
また、証拠が手元に保管されていなくても諦める必要はありません。弁護士から会社に対し、資料の提出を求めれば、多くの会社は開示に応じますので、開示された資料に基づいて残業代請求が可能となります(開示されない場合は、訴訟を起こした上で、裁判所を通じて資料の開示を求めることが可能です)。

②残業代を計算する

残業代は、以下の式で算出することができます。

【残業代(割増賃金)の計算式】

残業代=基礎賃金×残業時間×割増率

基礎賃金とは、「月の所定賃金÷1ヶ月の平均所定労働時間」のことを指し、平たく言うと「時給」のことです。労働の対価と見なせる賃金を合算し、1ヶ月に働く時間で割ることで、基礎賃金(時給)を算出します。
残業時間は、集めた証拠に基づいて計算します。

割増率とは、法律で決められている残業代への上乗せ率のことで、具体的な数値は以下のように定められています。

【割増率の規定】
法定外労働(1日につき8時間・1週間につき40時間を超えた労働)・・・25%以上
60時間超の法定外労働・・・50%以上
深夜労働(22時〜5時)・・・25%以上
休日出勤・・・35%以上

具体例を挙げてみましょう。

 

【例】
月の所定賃金:25万円
1ヶ月の平均所定労働時間:160時間
対象月の残業時間:20時間(深夜労働や休日出勤はなし)

25万円÷160時間=約1,562円
1,562円×20時間×1.25=39,050円

上記の条件の場合、残業代は1カ月あたり39,050円となります。
※会社の規定などによっては、端数処理により少々の誤差が生まれる可能性があります。

 

実は残業時間と見なされる時間

労働時間とは、「使用者の指揮下に置かれている時間」のことを指します。「使用者の指揮下に置かれている時間」は、保育園で保育や作業をしている時間に限りません。以下のような残業も、労働時間に含まれるでしょう。

・持ち帰り残業の時間
・作業をしている休憩時間
・イベントや行事の準備・後片付けをしている時間

たとえば、自宅に持ち帰って仕事をしている場合でも、その作業が使用者から明確に指示されている、または業務上必要であることが認められる場合には、その作業時間も労働時間に含まれます。(ただし持ち帰り残業の場合、実際にどの程度作業を行ったかを示す証拠が残りにくいため、立証が難しい場合があります)

また、休憩時間を返上して行う業務、イベントや行事の準備・後片付けなども立派な労働時間であり、賃金が発生します。
もっとも、実際の計算には、雇用契約書や就業規則、賃金規程などを詳細に検討し、請求漏れがないように慎重に判断する必要があります。実際の計算については、弁護士に任せる方が過少請求にならないので安心かと思います。

③内容証明郵便を送付する

残業代の計算が終わったら、保育園や運営団体に対し、「未払い残業代を請求する」旨の内容証明郵便を送付します。

内容証明郵便とは、「どんな文書をいつ誰が誰に向けて送付したか」ということが郵便局によって記録される郵便サービスのことです。これにより労働者が未払い残業代請求を行った事実が、客観的に証明できます。

(ただし請求した事実と日付が証明できれば、必ずしも内容証明郵便である必要はありません。LINEやメール、会話の録音などで、催告の事実を残しておくのも有効となる場合があります。)

なぜ内容証明郵便を利用するのか

残業代請求には、3年の時効が存在します。この時効は、支払いの催告によって6ヶ月間止めることが可能です。

内容証明郵便で催告を行えば、催告を行った事実や日付などがしっかり記録されます。これにより、相手側から「催告を受けていない」と主張された場合に備えることができます。

④会社と直接交渉する

次に、保育園や運営団体側と直接交渉し、未払い残業代の支払いを求めます。

この交渉は労働者自身が行うことも可能です。しかし、元職場にお金を請求することに抵抗を感じる方も少なくありません。いざ交渉を始めると、相手側にうまく丸め込まれてしまうケースも考えられます。また、そもそも相手側と直接顔を合わせたくないと考える方もいらっしゃるでしょう。

ご自身での交渉にご不安な方は、弁護士への依頼をご検討ください。
弁護士であれば、証拠集めから交渉・労働審判・訴訟に発展した場合でも、粘り強く請求を行うことができます。

⑤労働審判・裁判を行う

手元にある証拠や相手側の返答次第では、労働審判・裁判といった法的な手続きを行うこともあります。

労働審判とは、労働者と事業主の間で起こった労働関係のトラブルを、迅速かつ適正に解決するための手続きのことです。これは裁判のように徹底的に争って白黒をつける場ではなく、あくまで話し合いによる和解を目指すものです。

労働審判では、原則として3回以内の期日で審理を終えることが定められています。そのため手続きはおよそ1ヶ月半~3ヶ月程度で終了し、迅速な解決が期待できますが、事案によっては十分な審理ができないこともあります。

一方裁判は、労働審判に比べ手続きに時間がかかり、場合によっては解決までに1年以上を要することも少なくありませんが、その分十分な審理が可能となります。複雑な論点のある事件については、労働審判での解決は難しく、最初から裁判を選択することとなります。

弁護士に依頼している場合、裁判に労働者自身が毎回参加する必要はなく、基本的には弁護士が代理人として参加します。(証人尋問などの特別な場合には、労働者本人の参加を求められることがありますが、これは比較的まれなケースです。)

労働審判と裁判に関しては、「残業代請求では「労働審判」と「裁判」、どちらがお勧め?」の記事で詳しく解説しています。

勝訴後に支払われない場合は?

裁判で労働者側が勝訴したにもかかわらず相手側が残業代を支払わない場合には、強制執行を行うことができます。
強制執行では、相手側(保育園や運営団体)の財産を差し押さえ、強制的に未払いの金銭を回収することが可能です。具体的には銀行口座や不動産などを差し押さえ、債務の履行を図ります。

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監修弁護士

勝浦 敦嗣(かつうら あつし)執筆者:勝浦 敦嗣(かつうら あつし)
所属:第二東京弁護士会所属
-監修コメント-
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