会社に勤めている人が残業をした場合には、残業時間に応じた残業代が支払われます。
しかし、中には残業をしたとしても残業代を出さない会社も存在します。
では、いったいどれくらいの割合の会社で、支払うべき残業代が支払われていないのでしょうか。
今回は、残業代が出ない会社の割合とその理由、残業代の法的取り扱いについて、わかりやすく解説していきます。
目次
「残業代が出ないのは当たり前」ではない!
残業代が支払われない人の中には、「自分の仕事が遅いから残業代が出ないのは当たり前」「会社のためにサービス残業は仕方ない」とあきらめている人がいるのではないでしょうか。
結論から述べると、このような考えは間違いです。
管理監督者などの一部の例は除きますが、基本的に所定労働時間を超えて働いた労働者には、相応の残業代が支払わなければなりません。
これは法律で明確に定められていることです。
残業代が支払われない場合でも、あきらめる必要はありません。弁護士からのアドバイスをもとに、残業代の請求を行いましょう。
残業代が出ない会社の割合
労働者が残業した場合、原則会社から残業代が支払われなくてはなりません。それにも関わらず、残業に際して残業代が出ない・支払われない会社は一定数存在するようです。
東京都産業労働局が都内の事業所に勤める2,000人の正社員を対象に2016年に行なった「労働時間管理に関する実態調査」では、「残業代(時間外手当)は全額支給されているか」という問いに対し、「全額支給されている」と返答した労働者の割合は73.4%、「全額支給されていない」と返答した労働者の割合は24.3%でした。
また、キャリア関連の相談サービスを展開する株式会社ライボが796人の社会人男女に対し2023年に行なった「残業に関する実態調査」では、残業代の有無について、「出る」と返答した人の割合が60.7%、「出ない」と返答した人の割合が19.5%、「固定残業代制である」と返答した人の割合が19.8%となりました。
この2つの調査結果からは「全体の20%前後の労働者が残業代を受け取れていないと答えた」ということが分かります。
つまり、残業代を支払っていない会社の割合は決して少なくはないのです。
残業代が出ないのは基本的に違法
残業をした労働者に対し残業代を支払わないのは、基本的に違法です。
その根拠は労働基準法第37条。この条文には「時間外労働を行った労働者に対して、会社は割増賃金(規定の割増率を適用した残業代)を支払わなければならない」旨が定められています。
管理監督者など一部残業代支払いの対象外となるケースもありますが、一般の労働者は原則残業代支払いの対象であり、残業代を出さない会社の行為は違法です。
サービス残業を受け入れるのではなく、まずは「会社が違法な対応をしている」という認識を持ちましょう。
もし会社(使用者)が未払いの実態を放置し続けた場合、労働基準法違反として刑事罰の対象となる可能性があります。
また労働者側からの請求手続きにより、支払われなかった残業代は後から回収することも可能でしょう。
よくある残業代を出さない4つの理由
残業代を出さない会社は、うまく理由をつけて残業代の支払いから逃れています。この時よく挙げられるのが、以下のような理由です。
残業代が出ない契約だから
「残業代が出ない契約だから」と、会社が残業代支払いを拒むケースは多いです。
しかし、そもそも残業に伴う残業代の支払いは会社が負う法的義務です。もし契約時に「残業代が出ない」という内容で労働者が合意していたとしても、その契約自体が違法であるため、そのような合意は無効となります。
従って、入社時に労働者と残業代が出ない契約を交わしていたかどうかに関わらず、労働者が残業をした場合には、会社は残業代を支払わなければなりません。
管理職だから
「管理職だから残業代は出ない」というのも、残業代を出さない会社がよく使う理由の一つです。
実は「管理職だから残業代は出ない」という認識は間違いです。労働基準法が残業代の支払い対象外として定めているのは、「管理職」ではなく「管理監督者」です。(管理監督者の場合でも深夜手当は支払われます。)
管理監督者に該当するかどうかについては、以下の基準をもとに判断されます。
・事業主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限が認められていること
・自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有していること
・一般の従業員に比しその地位と権限にふさわしい賃金上の処遇が与えられていること
職務の実態が上記3つの点を満たす場合、経営者と一体的な立場にあるとして、その人は管理監督者と認められることが多いです。
分かりやすいイメージとしては、課長や係長であれば管理監督者に該当することはほぼありません。部長でも多くの場合は管理監督者とはいい難いと思われます。
よくあるケースとして、管理職にあたる役職名を与えられているにも関わらず、実態としては一般社員とあまり変わらないというケースも見受けられます。
もし上記に挙げた3つの判断基準に照らし、管理監督者に該当しないと判断される場合、会社はその労働者に対し、残業代を支払う必要があります。
固定残業代制だから
固定残業代制とは、実際の残業時間に関係なく、一定時間分の残業代(固定残業代)があらかじめ給与に含まれている給与形態のことです。
固定残業代制を導入している会社の場合、固定残業代分の相当時間までは、追加で残業代が支払われることはありません。ただし、固定残業代分を超えて残業をした場合には、超過分の残業代が追加で支払われる必要があります。
なお、固定残業代制の導入にあたっては、労使間での合意と、給与明細や雇用契約書への固定残業代の明確な記載が求められます。
固定残業代を導入していると主張している会社であっても、専門の労働者側弁護士が分析すれば固定残業代を無効にできるケースも数多くあります。
歩合給制だから
歩合給制とは、労働者の業務上の成果に応じて支給額が変わる給与形態のこと。労働基準法では労働者に対する完全歩合制は禁止されているため、給与の一部分のみ歩合給とする形(固定給+歩合給)で導入している会社が存在します。
「歩合給制だから残業代は出ない」とする会社があるようですが、この認識は間違いです。
歩合給制であったとしても、時間外労働を行った労働者には、会社は残業代を支払う必要があります(ただし、通常の賃金に比べると残業代の額は少なくなります)。
残業代が出ない時の相談先
労働者がサービス残業を受け入れる必要はありません。残業をしているのに会社から残業代が出ない場合には、「労働基準監督署」または「弁護士」に相談し、状況の打開を図りましょう。
労働基準監督署
労働基準監督署は、労働基準法などの関連法令をもとに、事業所の健全な運営を監督する機関です。
労基署では、労働者からの労働問題に関する相談を無料で受け付けています。窓口以外にも、電話やメールなどで相談できるので、残業代の不払いに遭っている方は利用してみると良いでしょう。
弁護士
「支払われていない残業代を回収したい」という場合には、弁護士への依頼を検討しましょう。
未払い残業代は、過去に遡って会社に請求することが可能です。弁護士は、証拠集めから残業代の計算、会社との交渉、訴訟まで、一連の請求手続きを労働者に代わって行うことができます。
弁護士の介入には、手続きの負担が軽減される他、会社から真摯な対応を引き出せたり万が一の訴訟にも対応してもらえたりといったメリットがあります。
未払い残業代請求は退職後でも可能なので、まずは労働問題を扱う弁護士に相談してください。
残業代請求は弁護士へ相談を
会社から残業時間に応じた残業代が支払われていない場合には、労働問題を扱う弁護士に相談しましょう。
未払い残業代は本来あなたの給与です。あきらめるのではなく、しっかり回収することをおすすめします。
勝浦総合法律事務所では、未払い残業代の請求手続きを承っております。年間7.8億円の回収実績を持つ弁護士が、面倒な手続きを代行し、残業代を回収します。
弁護士費用が不安という方もご安心ください。弊所は成功報酬制を採用しており、初期費用は0円です。
残業代の不払いにお悩みの方は、1人で悩むのではなく、お気軽に弊所にお問い合わせください。
監修弁護士
執筆者:勝浦 敦嗣(かつうら あつし)
所属:第二東京弁護士会所属
-監修コメント-
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