勤めていた運送会社を退職する際には、退職金やその他の請求できるお金について、よく確認しておく必要があります。
特にトラックドライバーの場合、退職金制度が整っておらず「退職金が出なかった」というケースも少なくありません。また、退職金以外にも請求できるお金が存在します。

本記事では、運送業界で働くトラック運転手の退職金の相場、さらに退職時に請求できる可能性があるその他のお金について、わかりやすく解説していきます。

トラックドライバーに退職金がない会社もある

退職金制度は、法的に義務付けられた制度ではありません。そのため制度の有無は運送会社によって異なります。

大手の運送会社の場合であれば、退職金制度が整備されていることが多く、従業員であるトラックドライバーが退職金を受け取れる可能性は高いといえます。
また大企業の場合、退職金制度ではなく確定拠出年金制度を導入している会社もあります。確定拠出年金(企業型)とは、会社が拠出した掛金を従業員が運用し、その金額をもとに給付額が決まる年金制度のことです。
もし会社が倒産した場合、退職金は支払われなくなる可能性がありますが、会社の財産と分けられている確定拠出年金は保全されます。

一方で、規模の小さい中小企業の場合、退職金制度が整備されている会社は少ないです。退職金制度を導入している場合でも中小企業退職金共済制度を利用したものが多く、その掛け金の低さから、実際に支払われる退職金の金額は少額となる傾向があります。
また、確定拠出年金も中小企業には浸透していないのが現状です。

トラックドライバーの退職金の相場

厚生労働省の就労条件総合調査によると、トラックドライバーを含む一般企業の退職金の平均支給額は以下のようになりました。

大学・大学院卒(管理・実務・技術職) 高校卒(管理・実務・技術職) 高校卒(現業職)
定年の場合 1,896万円 1,682万円 1,183万円
自己都合の場合 1,441万円 1,280万円 921万円
会社都合の場合 1,738万円 1,385万円 737万円
早期退職の場合 2,266万円 2,432万円 2,146万円

※勤続20年以上かつ45歳以上の退職者が対象

(参照:厚生労働省『令和5年度就労条件総合調査』)

 

運送会社に勤めるトラック運転手の退職金も、上記の金額が目安になると考えられます。

ただし、会社や勤続年数によって退職金の金額は大きく変わります。自分の退職金を把握したい場合、まずは雇用契約書や就業規則を見てみましょう。

トラックドライバーが退職時に請求できるお金

トラックドライバーの方の中には、企業の方針で退職金が出ない方も少なくありません。そこで、退職時に請求できるその他のお金を紹介します。

未払い残業代

トラックドライバーは長時間労働になりやすく、多額の残業代が発生する傾向があります。そのため会社側は様々な「工夫」を行い、残業代の支払いを抑えようとするケースも見受けられます。

例えば「運行手当」「長距離手当」「特別手当」などと称し、これが固定残業代であり、残業代の代わりだと主張する会社があります。しかし弁護士が介入して就業規則や賃金規定を確認すると、以下のような問題点が見つかることがあります。

・入社時にはそのような説明がなく、雇用契約書就業規則賃金規定を見ても当該手当が残業代に相当するという記載がない
・現在の就業規則上は当該手当が残業代に相当するという記載があるが、入社時の就業規則にはそのような記載がなかった
・1時間あたりの賃金が最低賃金を割っている
・固定残業代の額が多く、残業させ放題の結果になっている

このような場合、「運行手当」などを残業代として扱うことは、法律上認められない可能性が高いです。そのためケースにもよりますが、新たに残業代を再計算して請求できる可能性があります。

また、次のような説明で残業代の支払いを避けようとする会社もあります。

・「裁量労働制だから残業代は出ない」
・「業務委託だから残業代は出ない」

上記のような主張が認められるかどうかは、契約内容や実際の労働実態をもとに個別に判断されます。 形式的に業務委託契約とされていても、実態が会社からの指揮命令を受ける雇用契約である場合は、雇用契約した労働者として認められる可能性があります。

まずは弁護士に相談し、残業代請求が可能かどうか、専門的な見解を得ることをおすすめします。

荷待ち時間の未払い給与

トラックドライバーとして働いていると荷物の積み下ろしの際に、荷待ち時間が発生することは珍しくないでしょう。この荷待ち時間を「休憩時間」としてデジタコに記録するよう指示している運送会社は少なくありません。

実は、荷待ち時間は基本的に休憩時間ではなく、労働時間と判断されることが多いです。

基本的に荷待ち時間中は、いつでも動けるように車で待機している必要があります。この場合、業務から解放されていない状態であるとは言えず、労働時間であると判断されます。
また積み荷に貴重品や危険物がある場合も、トラックから離れることは難しいでしょう。この場合の荷待ち時間も、労働時間と見なされる可能性が高いです。

もし荷待ち時間が労働時間として算入されておらず、その分の賃金が支払われていない場合には、未払い賃金の請求が可能です。
休憩時間と荷待ち時間について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にして下さい。
トラックドライバー必見!荷待ち時間は休憩時間?労働時間?

みなし残業時間を超えた部分の残業代

みなし残業代制(固定残業代制)とは「実際の残業時間にかかわらず、一定の時間を残業したとして、その分の残業代をあらかじめ給与に含める給与体系のこと」を指します。

みなし残業代制を導入している場合、みなし残業代の相当時間を超過した分については、別途残業代を支払う義務があります。
例えば、10時間分のみなし残業代が支給されている労働者が、15時間の残業をした場合、会社は追加で5時間分の残業代を支払わなければならないのです。

「みなし残業代制(固定残業代制)だから」と超過分の残業代が支払われていなかった場合には、ドライバーは会社に未払い残業代を請求することができます。

固定残業代の相当時間を超過した場合については、下記の記事にて詳しくまとめています。
固定残業代(みなし残業代)を超えた残業代は請求できます。

退職後に残業代請求を行うドライバーは多い

会社を退職後、未払いであった残業代の請求を行うトラックドライバーは多いです。

・「残業をしていたのに残業代が全く支払われていなかった」
・「残業代は支払われていたがその金額が適切でなかった」

といった場合には、退職後であっても残業代請求の手続きを行うことができます。

残業代請求には残業の事実や残業時間を証明する証拠が必要ですが、証拠を用意せずに退職してしまった場合でも、残業代請求をあきらめる必要はありません。
弁護士を通して開示請求などの手続きを取ることで、退職後でも証拠を収集することは可能です。

退職の際は退職金の有無だけではなく、未払い残業代がないかどうかもよく確認しておくことが重要です。

残業代請求の時効に注意

退職後でも、所属していた会社に対し残業代を請求することは可能です。ただし、残業代の請求に時効がある点には、注意しなければなりません。

残業代請求の時効は「3年」です。支払われるべきだった給料日から3年が経過すると、その権利は消滅してしまいます。そのため、可能な限り早めに請求手続きを開始することが重要です。
特に、3年以上前から未払いが発生している方は、古い分から順に時効で消滅していってしまう(退職直後であれば直近3年分の未払い残業代が請求できますが、例えば退職後1年を経過すると2年分しか請求できないことなってしまう)ため、注意が必要です。

なお、時効を一時的に止める方法も存在します。
この方法については、下記の記事で詳しく解説しています。
残業代はいつまで遡って請求できるか?時効を止める方法等を解説

未払い賃金・残業代請求は弁護士へ相談を

未払い賃金・残業代は、本来受け取るべき賃金です。しかしその請求権は3年で消滅してしまいます。もし未払い賃金や残業代がある場合には、弁護士に請求を依頼することも検討しましょう。

勝浦総合法律事務所では、未払い賃金・残業代請求手続きを受け付けています。弊所は特にトラックドライバーの残業代請求に力を入れており、多くの成功実績がございます。

月間100時間の時間外労働を行っていたドライバーのケース:900万円の未払い残業代請求に成功
・埼玉県の30代ドライバーの方が500万円の未払い残業代に成功
・北海道の40代ドライバーの方が、500万円の残業代を獲得したケース

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