残業続きの毎日でも、残業代がもらえると思えば少しは頑張れますね。
しかし、その残業代は正しい額で支払われているでしょうか?

使用者(雇い主)のミスで損をしないためにも、自分で残業代を計算してみましょう。

1.基礎時給を計算しよう

まず、基礎時給を計算しましょう。

基礎時給とは、自分の給料を時給に換算した金額のことです。

基礎時給

以下の計算式で求められます。

基礎時給 =基礎賃金(月額給料-除外手当)÷月に決められた労働時間 基礎時給 =基礎賃金(年俸額-年間除外手当)÷12ヵ月÷月に決められた労働時間

「年俸制の場合には残業代が出ないのでは?」と思われる方がいらっしゃいますが、それは違います。

賃金体系を年俸制にする場合、
企業には「基本給にあたる賃金」と「残業代部分」を明確に区別することが義務付けられています。

これを前提とすれば、「基本給にあたる賃金」から基礎時給を出し、残業代を計算することは可能なのです。
仮に計算した残業代が、年俸制の「残業代部分」を上回る場合には、追加で残業代を支払うよう、請求することができます。

除外手当

法律で次のように定められています。

労働基準法第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)抜粋

5. 割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。

労働基準法施行規則第21条

労働基準法第37条第5項 の規定によつて、家族手当及び通勤手当のほか、次に掲げる賃金は、同条第一項 及び第四項 の割増賃金の基礎となる賃金には算入しない。

一.別居手当
二.子女教育手当
三.住宅手当
四.臨時に支払われた賃金
五.一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金

つまり、手当として「家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金(決算賞与など)、1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金の手当」が支払われている場合には、毎月の給与額から差し引いて計算しないといけないのです。

 

2.割増時給を計算しよう

次に、基礎時給を使って、割増時給を計算しましょう。

割増時給とは

一定の場合にプラスされる時給のことです。働いた時間帯や休日出勤などによって、割増される率が変わります。

労働基準法第37条による計算方法

法定労働時間外労働(法定労働時間外とは、休憩時間を除き、1日8時間以上働いた部分)

基礎時給の25%割増(基礎時給 × 1.25)

法定休日労働(法定休日とは、1週間に必ず1日取らなければならない休日のこと)

基礎時給の35%割増(基礎時給 × 1.35)

深夜労働(深夜とは午後10時~翌日午前5時までを指す)

基礎時給の25%割増(基礎時給 × 1.25)

例えば、1日9時間、午後11時まで働いた場合

この場合、法定労働時間は8時間です。残業が1時間分ありますが、これは8時間を超え、さらに午後10時を過ぎているので「法定時間外かつ深夜労働」にあたります。

そのため、割増率は

法定労働時間外労働25%+深夜労働25%=基礎時給の50%割増(基礎時給×1.5)

として計算します。

なお、職場によっては就業規則で割増率を定めているところがあります。
その場合でも、法定の利率を下回ることはありません。正確な金額が知りたければ、一度就業規則に目を通してみましょう。

3.請求できる(受け取れる)残業代を計算しよう

最後に、今まで計算した基礎時給と割増率を使って残業代を出しましょう。

残業代=各残業時間帯の月時間数の合計×各残業時間帯の割増時給

ポイントは、残業時間帯を間違えないことです。

例えば、10時間労働をした場合でも、出勤日なのか休日なのかによって「残業」とされる時間が変わってきます。出勤日であれば法て時間外労働は2時間ですし、休日であれば10時間すべてが「残業」にあたりますね。

また、賃金の時効にも注意が必要です。

賃金の時効とは

労働基準法第115条(時効)

この法律の規定による賃金(退職手当を除く)、災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効によって消滅する

この法律によれば、賃金は2年間で時効にかかり、使用者に請求できなくなります。
時効のスタートは給与支給日です。

残業代の時効についてはこちらをご確認下さい。

4.平成22年4月1日の労働基準法改正の新しいルールが追加されました

平成22年、労働基準法に残業代についての新しいルールが加わりました。

労働基準法第37条(時間外、休日及び深夜の割増賃金)

当該延長して労働させた時間が1箇月について60時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。(以上、抜粋)

この条文がいっているのは、「1か月60時間以上残業した場合には、割増率が基礎時給の50%割増( 基礎時給 × 1.50 )にアップする」ということです。
使用者に残業代としてたくさんお金を支払わせることで、長時間労働を防止しようとする目的で作られました。
但し、現在のところ、この条項が適用されるのは、資本金及び従業員数が一定基準を超える大企業に限られています。

監修弁護士

勝浦 敦嗣(かつうら あつし)
執筆者:勝浦 敦嗣(かつうら あつし)
所属:第二東京弁護士会所属
-監修コメント-
ご相談料は0円、初期費用も0円の完全成功報酬にてご依頼いただく事が可能です。まずは、お気軽にご相談ください。