「会社に残業代を請求したいけど、どのくらいの金額が相場なのか知りたい」
「未払いになっている残業代の和解金相場を知り、請求を始めたい」
現在残業代請求をご検討されている方にとって、和解金の相場は請求を決断するための、大きな決め手となるものです。特に長く勤務を続けている方にとっては、会社とトラブルにならずに残業代請求を行いたいと考えるでしょう。
そこで、この記事では「残業代請求の和解金相場」をテーマに、和解金の相場や決めるための要素について詳しく解説します。現在残業代請求をご検討されている方は、ぜひご一読ください。
残業代請求における和解金に相場は無い
残業代請求を始めるにあたって、知っておきたい和解金の相場とは、一体どのぐらいなのでしょうか。
先に結論を言ってしまいますが、「残業代請求における和解金に、相場はない」です。残業代とひと言で言っても、労働者によって給与も残業量も全く異なっており、請求の目安となる相場はありません。
求める和解金の金額はケースバイケースです。実際に労働者が請求するにあたっては未払いの残業代計算を行い、証拠などを確認しながら和解金の金額を決定します。
残業代請求で和解する場面
残業代を請求したい場合、「和解」という解決方法で終結できる場合があります。
では、実際に和解する場面にはどんなケースが考えられるでしょうか。以下3つのケースを紹介します。
1 交渉
残業代請求の初期段階は、ご自身や弁護士とともに、会社側へ直接未払いの残業代を請求します。残業代を計算して会社側へ請求をすると、会社側が和解案を提示してくることがあります。
そこで、労働者側と会社側が直接交渉を行い、双方が納得できる妥当な着地点を見つけられたら、和解が成立できます。
2 労働審判
交渉が上手くいかなかった等のケースでも諦める必要はありません。労働審判で和解できることがあります。
労働審判とは一般的な訴訟とは異なり、労使トラブルが早期解決できるように運営されている裁判所上の手続きです。労働審判を申立てし、話し合いの中で和解が成立することが多いのです。
3 訴訟
会社との交渉や労働審判が決裂した場合、訴訟で和解を目指す方法があります。
訴訟の場合、判決で結論が出ることもありますが、裁判官が和解を勧めることがあります。この方法は「訴訟上の和解」(民事訴訟法第267条)と言われており、裁判の途中であっても双方が和解できれば事件は終結します。
このように、和解のパターンは3つの方法があります。交渉の段階で決裂しても、労働審判や訴訟での和解を目指せます。
法律上の「和解」とは
残業代請求の解決方法である「和解」をする際には、知っておきたい注意点があります。それは、和解後は結果を覆せないということです。
和解とは、当事者同士が譲歩することで解決を行う方法です。双方が納得して合意した以上、あとから「やっぱり納得がいかない」と思っても、覆すことはできません。交渉の段階で納得がいかない場合は妥協して和解をするのではなく、労働審判を行うことも解決方法の1つでしょう。
例外として、和解後でも結果を覆せる場合もあります。たとえば、納得していないにもかかわらず、無理矢理に合意を求められた和解の場合などは覆る可能性があります。しかし、一度和解した事実を覆すためには証拠も必要となるため注意が必要です。一度の和解でベストな解決を目指しましょう。
残業代請求における和解金を決める要素
残業代請求に和解金の相場自体はありません。では、実際に妥当な金額の和解金を算出するためには、どんな要素をもとに算出するのでしょうか。この章では和解金を決める4つの要素について紹介します。
1 未払い残業代
和解金を検討するにあたっては、まず労働者側が自身の未払い残業代を算出する必要があります。未払い残業代が和解金の基礎となるためです。
高額の未払い残業代があれば、その分請求する和解金額は大きくなります。一方で、少額の場合は求める和解金額も小さくなります。未払い残業代が分かったら、遅延損害金の算出(後述しています)も行います。
2 証拠の有無
未払い残業代を算出する場合、残業代の算出根拠となる証拠が必要です。残業があったことを証明する「立証責任」は労働者側にあるためです。一般的に証拠に使われるものは以下のとおりです。
・労働契約書や雇用通知書
・タイムカードや勤怠管理の記録
・業務日報や営業報告のメール
・給与明細
・タコグラフ など
3 残業代請求にかかる労力
残業代請求の方法には会社との直接交渉だけではなく、労働審判や訴訟の方法もあると触れました。労働審判や訴訟に移行する際には、どの程度の労力をかけて回収を目指すのか、決める必要があります。
労働審判や訴訟を行うには、裁判所や弁護士へ支払う費用が必要になります。そのため、労働審判や訴訟の結果、より高額な和解金をもらえたとしても、手元に残るお金はそこから減ってしまうのです。また、通常労働審判は3カ月程度、訴訟であれば通常1年以上の期間が必要です。
そのため早期の解決を目指すのであれば、時間と費用をかけずに会社との直接交渉での和解を目指すというのも1つの考え方です。ただ、訴訟前の和解だからといって、必要以上に低い金額で和解してしまうのはもったいないと思いますし、当事務所はお勧めしません。
4 遅延損害金
残業代を請求するにあたって、支払いが遅れている場合、「遅延損害金」を求めることができます。本来は受け取れていたはずの日から支払いが遅れたことに対する損害を求めるものです。
しかし、和解においては遅延損害金を請求しない場合もあります。早期解決を目指す場合で、会社側の譲歩を引き出すためにあえて加算しないというケースです。一方で、会社側が未払い残業代の請求に全く応じない場合は、制裁金としての意味も込めて遅延損害金の請求を行う場合もあります。
付加金とは
付加金とは残業代請求においてペナルティを意味するお金です。残業代を支払わない悪質な会社に対して行われる措置のことで、裁判所の命令により、未払い残業代と同額を限度に付加されます。必ずしも全ての案件で付加金の支払い命令が出るわけではありません。
付加金は、第一審や控訴審が終結するまでに残業代が支払われない場合にのみ命令が出るため、和解で解決する場合は付加金は加算されません。
残業代請求における和解金額の主なケース
実際に残業代請求を行う場合、和解金額にはどのようなケースがあるでしょうか。請求に臨むにあたって参考となるケースについて紹介します。
ケース1 和解金で全額回収できる
残業の動かぬ証拠が揃っており、会社が納得したケースの場合は、早急に和解金として未払い残業代が支払われることがあります。会社としても、争いが長引くと遅延損害金などのリスクが高まるため、すぐに解決したいと考えるためです。
高額の残業代請求ではない場合、会社としては他の従業員へ問題が波及することを防ぐためにも、すぐに支払って円満な解決を求めるケースもあります。
ケース2 未払い残業代に遅延損害金や付加金が加算される
未払い残業代に加えて、遅延損害金や付加金が加算して回収できるケースもあります。遅延損害金には以下の基準があります。
・会社に在職中の場合は年3%
・すでに退職している場合は年14.6%
つまり、会社側は支払いを渋っていればいるほど、遅延損害金は大きくなります。そのため未払い残業代と現時点での遅延損害金を加算して支払い、すぐに和解を成立させるケースもあります。なお、付加金は裁判所に求め、支払いが命令されれば加算されます。
ケース3 一部のみ支払われる
残業の証拠が乏しいケースや、双方が早期に解決したいケースでは、しかるべき妥協点を見つけ、一部の残業代支払いで和解することもあります。一部の支払いであっても、労働審判や訴訟に移行すると時間がかかるため、労働者側もすぐに解決できるというメリットがあります。
また、少額の残業代の場合、時間と労力をかけて回収を目指すのではなく、納得のできる金額が提示された時点で和解するという考え方もあります。
和解しなかった場合、どうなる?
では、会社との交渉に臨んでも、和解に至らなかった場合はどうなるのでしょうか。
「残業代請求で和解する場面」の解説でも触れていますが、会社との交渉で和解が成立しなかった場合は、労働審判や訴訟に移行します。
労働審判では和解を促されることが多いですが、合意できなかった場合は訴訟で支払いを求めることができます。訴訟では裁判所が審判や判決を言い渡し、双方に異議が無ければ事件が終結します。ただし判決の結果は労働者側に有利に終わるとは限りません。
交渉の段階で和解ができれば、労働審判や訴訟に必要な費用や時間が不要になるため、労働者側にとっても一定のメリットはあると言えるでしょう。
まとめ
この記事では、残業代請求における和解金の相場について、詳しく解説を行いました。残業代の請求で和解を目指す場合、相場はないため残業代の証拠を元に計算を行い、交渉を重ねていく必要があります。
働いた分の残業代を適切に回収するためには、ご自身一人ではなく、残業代の問題に精通した弁護士に相談されることがおすすめです。証拠集めから交渉、審判や訴訟なども一元的にサポートしてくれます。まずはお気軽に弁護士にご相談ください。
監修弁護士
執筆者:勝浦 敦嗣(かつうら あつし)
所属:第二東京弁護士会所属
-監修コメント-
「解決したはいいけど、費用の方が高くついた!」ということのないように、残業代請求については初期費用無料かつ完全成功報酬制となっております。成果がなければ弁護士報酬は0円です。お気軽にご相談ください。