タイムカードで従業員の勤怠を管理している会社は多いでしょう。ただし、その中にはタイムカードを正確に管理・運用していない会社も存在します。
例えば、定時になると上司が勝手に全員分のタイムカードを押す、自分のタイミングで人のタイムカードまで押す従業員がいるなど。

これは、労働時間の管理を不正確にし、サービス残業を発生させる問題行為です。
では、このような行為をやめさせるには、どのように対処すれば良いのでしょうか。

今回は、タイムカードを勝手に切られる場合の対処法と未払い残業代の請求手続きについて、わかりやすく解説します。

 

タイムカードを勝手に押されていませんか?

タイムカードは、労働時間の記録・管理に役立つツールです。しかし、タイムカードの運用にあたり、上司や同僚からこのような対応を受けたことがある人が少なくないのではないでしょうか。

・残業した後にタイムカードを押そうとしたら、既に上司にタイムカードを勝手に押されていた
・すぐに退勤できる状況ではないのに、ベテラン社員がいつも他の従業員の分まで先にタイムカードを切ってしまう
パートの同僚がいつも勝手に他のパートのタイムカードを押すため、正確な勤怠管理ができない
休憩に入ろうと思ったら既にタイムカードが押されていて、実際の休憩が短くなってしまった

他人に勝手にタイムカードを押されると、正確な勤怠管理はできなくなり、結果としてサービス残業が発生する可能性があります。
サービス残業は労働基準法に反するものであることから、タイムカードを勝手に押すという行為も違法行為につながるものだといえます。

 

タイムカードを勝手に押されるケース

タイムカードは、労働時間を正しく把握するため、労働者自身が始業および終業のタイミングで押すものです。タイムカードの不正打刻により、本来受け取れるはずだった賃金が受け取れないのは、深刻な問題であると言えます。例えば、次のようなケースです。

定時になったタイミングで勝手にタイムカードを押される
・先に仕事を始めていても、始業時間にならないとタイムカードを押せない
自動的に始業時間と終業時間、または休憩時間にタイムカードが押されるよう設定されている
・タイムカードの打刻が15分刻みで、15分未満の労働は切り捨てられる

タイムカードを先に切らせる・勝手に切ることには、残業代の支払いを避けようとする会社の目論見があると予想されます。また、上司や同僚が他人のタイムカードを勝手に押すことが慣習化してしまっている職場もあるでしょう。
このようなケースでは、労働者はサービス残業をさせられやすくなってしまいます。それを避けるためにも、タイムカードを勝手に切るという行為に対しては、然るべき対処を取ることが大切です。

 

タイムカードを勝手に押される場合の対処法

労働に対する然るべき対価を受け取るためにも、タイムカードを勝手に切られる場合には、次の対処法を取ることを検討しましょう。

仕事を切り上げる

タイムカードを先に切られてしまったのに、仕事を続ける必要はありません。
タイムカードをもとに労働時間が記録され、その記録をもとに賃金が支払われる会社にお勤めの場合、タイムカードを勝手に押されてしまっては、労働時間に見合わない賃金が支払われることになります。
このようなサービス残業は違法であるため、従業員が残業をする必要はありません。

タイムカードを使った問題のある体質を変えるためには、「サービス残業はしない」という意思を会社側に示すこともご検討ください。

残業の証拠を残す

タイムカードを切られてしまった後に残業しなければならない場合には、残業の証拠を残すようにしましょう。タイムカードよりも客観的で合理的な証拠がある場合、それが残業の証拠として認められる可能性があります。

タイムカード以外の残業の証拠としては、次のようなものが有効です。

・勤怠管理システムのデータ
・業務用メールの送受信記録
・業務用パソコンのログイン記録
・Googleマップのタイムライン
・業務日誌
・残業指示書
・メモ
・交通系ICの記録、タクシーの領収書
など

上記のような有効な証拠があれば、未払いの残業代請求が成功する可能性が高まります。
残業代をしっかり請求するためにも、証拠はなるべく多く確保しておくようにしましょう。

「残業代請求に有効な証拠一覧」については、下記の記事にて詳しく解説しています。

サービス残業の証拠の残し方|タイムカードがないケース等も解説

勝手にタイムカードを押す社員を注意してもらう

勝手にタイムカードを押す社員やパート・アルバイトがいる場合、会社にその人を注意してもらうのも一つの方法です。

タイムカードを正しく運用することは、会社の義務です。正しい運用を妨げる行為をしている従業員がいる場合には、会社として厳しく注意しなければなりません。それが上司にあたる立場の者であった場合や悪質であった場合には、より厳しい処分が必要になることもあるでしょう。

ただし、会社自体がタイムカードを先に押すよう指示していたケースでは、この方法を取ることはできません。このような場合には、労働基準監督署や弁護士への相談も検討しましょう。

未払い残業代を請求する

これまで、タイムカードを勝手に切られた後にサービス残業をさせられてきた場合には、会社に対して未払い残業代の請求を行うことも検討しましょう。

前述のとおり、タイムカードと実働時間が違っても、他の証拠により残業の事実を証明することは可能です。残業の事実が証明できれば、労働者は支払われていなかった残業代を受け取ることができます。

また、労働者による未払い残業代の請求が、タイムカードの不正な管理の是正につながることもあるでしょう。

 

バイトでも残業代は発生する

タイムカードを勝手に押されてしまっている人の中には、「自分はアルバイトだから関係ない」「パートだからどうせ残業代はもらえない」と、あきらめている人もいるのではないでしょうか。
しかし、アルバイトかパートかに関わらず、基本的には残業すると残業代が発生します。タイムカードを先に切られ、サービス残業を強いられることは、違法です。

従って、アルバイトやパートでも、タイムカードを不正に運用されている場合には、会社に対し残業代を請求することができます。そのためには、残業の証拠を確保しておくようにしましょう。

 

残業代請求の証拠の集め方

既にご紹介してきたとおり、未払い残業代を請求するには、証拠が重要です。先にタイムカードを切られているようなケースでは、タイムカード以外に残業の事実とその時間がわかるような証拠を用意しなければなりません。

残業時間中に送付したメールや、Googleのタイムラインのログなど、まずは自分にできる範囲で証拠を集めましょう。
また、証拠が手元にないという方も、残業代請求をあきらめる必要はありません。なぜなら、会社に対して証拠開示を求めることができるためです。
会社への証拠開示請求は、個人で行うよりも弁護士を通じて行うことで、対応してもらえる可能性が高くなります。

「残業代請求に有効な証拠を確保する方法」は、下記の記事にて詳しく解説しています。

残業代を請求したいけど証拠がない場合の対処法|証拠になるものを詳しく解説

未払い残業代請求は弁護士へ相談を

タイムカードを勝手に押す行為は、法律違反にあたる可能性があります。日頃からそのような行為に遭って、サービス残業を強いられている方は、会社に対する未払い残業代の請求を検討しましょう。

また、残業した場合の残業代は、雇用形態に関わらず発生します。社員はもちろん、アルバイトやパートであっても未払い残業代の請求は可能なので、あきらめないようにしましょう。

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監修弁護士

勝浦 敦嗣(かつうら あつし)執筆者:勝浦 敦嗣(かつうら あつし)
所属:第二東京弁護士会所属
-監修コメント-
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