内部告発によって、運送会社の不正が発覚するケースがあります。例えば、残業代の未払いや点呼未実施、荷物の過積載、車庫飛ばしなど。
このような行為は、もちろん法令に違反します。
安心・安全な環境で働くためにも、会社を通報することも検討すべきでしょう。

そこで今回は、法令に違反している運送会社を通報する方法について、わかりやすく解説します。

 

主な通報・相談先

運送会社が法令違反をしている場合の主な通報・相談先としては、以下のような機関が考えられます。

①地方運輸局(陸運局)
②労働基準監督署
③弁護士

どんな内容を通報・相談するかによって、選ぶべき連絡先は異なります。機関ごとに詳しく説明していきましょう。

 

①地方運輸局(陸運局)

地方運輸局には、運送業に関する法令違反などの通報を受け付ける窓口が設置されています。必要に応じて巡回指導や監査を行い、是正を図るのが地方運輸局の目的です。

地方運輸局へ通報・相談できる事項には、以下のようなものがあります。

・速度違反を引き起こすおそれがある非合理的な到着時間の指定
やむを得ない遅延に対して課すペナルティ
・依頼になかった急な業務の増加(積込み直前に貨物量を増やす、ラベル貼りや検品をさせられるなど)
恒常的な荷待ち時間の発生
当初の依頼とは異なる積込み作業
・高速料金などの運送費用の自己負担
貨物事故(つぶれ、破損、へこみ、こすれなど)への過度な対応の要求
異常気象によるトラブル
・その他コンプライアンス違反 など

上記に当てはまる事柄が認められる場合には、国土交通省「荷主等の違反原因行為の通報窓口について」のフォームから連絡することが可能です。

また地方運輸局は、監査の結果、労働基準法や最低賃金法などへの違反が認められた場合、労働基準監督署へ通報します。通報を受けた労働基準監督署は調査を行い、事業者に対し是正勧告などを行います。

 

公益通報手続を通じた通報

運送会社の法令違反については、国土交通省の「公益通報等受付窓口」から通報を行うことも可能です。
公益通報者となれるのは、被通報者(通報される事業者)における労働者、役員、退職後1年以内の労働者です。(2025年8月現在) この窓口では公益通報フォーム、手紙など文書での送付、FAXのいずれかの手段による通報を受け付けています。

公益通報には、公益通報者保護制度が適用されます。これにより、公益通報(内部告発)を行った通報者は法的に保護されるため、事業者等からの不利益な扱いを受けにくくなります。
通報を受けた担当部署は調査を行い、必要に応じて是正措置や再発防止措置、関係者の処分などを行います。

 

②労働基準監督署

労働基準監督署は、労働関係法令にもとづき、事業者を監督・指導する機関です。全国の労働基準監督署や労働局には、相談窓口が設置されています。

労働基準監督署では、次のような内容の相談を受け付けています。

労働条件に関すること(賃金、労働時間、解雇、退職金、その他待遇など)
労災・労災保険に関すること(職場や通勤中の傷病など)
安全衛生に関すること(労働災害防止、職業性疾病防止など)

たとえば「未払いの賃金がある」「不当に解雇された」「規定の退職金が支払われない」「労災が認められない」などの問題については、労働基準監督署へ相談するとよいでしょう。
全国の労働基準監督署の窓口一覧は、「労働基準行政の相談窓口」からご確認ください。

相談・通報を受けた労働基準監督署は、調査を行い、必要に応じて指導・是正勧告を行います。ただし、この是正勧告に強制力はありません。

また調査の結果、道路運送法・貨物自動車運送事業法などに違反している疑いがある場合には、労働基準監督機関は運輸局へ通報を行い、情報を共有して対処することがあります。

 

③弁護士(積極的な個別対応が必要な場合)

個別の問題に対して積極的な対応が求められる場合には、弁護士への相談・依頼が有効です。

運輸局や労働基準監督署へ通報した場合、その対応は会社に対する是正指導にとどまることが多いです。

一方で、弁護士に依頼すれば、未払い残業代の請求や不当解雇に対する損害賠償請求など、具体的な法的手続きを通じて個別の事案に対応することが可能です。

また会社側が労働管理の重要性に気づくのは、残業代請求などの実害を被ったときであることも少なくありません。したがって場合によっては労基署や運輸局による是正指導よりも、弁護士からの法的対応の方が、事業主に対して強い改善動機を与えることがあります。

勝浦総合法律事務所では、主に残業代請求に関するご相談・ご依頼を受け付けております。
相談料・着手金無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

 

運輸局・労基への匿名通報は会社にバレない?

運輸局や労働基準監督署への通報に際し、「会社にバレたらどうしよう」と不安に思う方も多いでしょう。
しかし、通報者の情報が会社に知られることは、基本的にはありません。

運輸局や労働基準監督署は通報者の保護を重視しており、通報者の個人情報が外部に漏れることのないよう、厳重に取り扱っています。
特に「公益通報者保護法」に基づく公益通報を行った場合には、通報者は法律によって保護されます。

ただし、通報者本人が同僚などに通報の事実を話してしまった場合、それが会社に伝わる可能性はあります。自分の身を守るためにも、通報したことについては、必要以上に他人に話さないよう注意しましょう。

 

通報がバレたら解雇・減給などの不利益はある?

現実的には、通報により解雇・減給などの不利益な取り扱いが、全く起こらないとは言い切れません。
しかしそのような場合でも、通報者は法律によって基本的に保護されています。

例えば「公益通報者保護法」に基づく公益通報を行った場合、通報者は同法によって保護されます。
また、労働基準監督署への通報についても、通報者への不利益な取り扱いは違法となります。(労働基準法第104条)

万が一、不利益な扱いを受けた場合には、ご紹介した行政機関に相談し法的な対応を検討しましょう。

 

運輸局・労基への通報の効果は?

運輸局に通報すると、その内容によっては監査が行われます。
監査は巡回指導と異なり基本的に抜き打ちで実施され、違反があれば行政処分が科される可能性があります。行政処分には、勧告・警告、営業停止や許可取消などが含まれます。

また労働基準監督署の場合も、通報の内容によっては事業場に立ち入り、設備や帳簿を確認し、法令違反があれば是正指導を行います。改善されない重大・悪質な違反は、刑事事件として捜査・送検されることもあります。

どちらの機関も一定の効果を期待できるとはいえ、従業員の個別の要望(残業代請求、不当解雇など)に対応することはできないので注意しましょう。

 

弁護士に依頼したほうが良いケース

「未払い残業代を請求したい」「不当解雇に対して損害賠償請求をしたい」といった、個人の損失に関する対応を行う場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。

弁護士は個別の事案に応じて、法的手続きを含む幅広い対応が可能です。
必要に応じて交渉・訴訟などの手段をとり、相談者の目的実現に向けて最善を尽くします。

実際、労働基準監督署から会社に対し、未払い残業代の支払いなどを行うよう促すケースもありますが、本来支払われるべき未払い残業代の一部しか支払われない、ということも少なくありません。
特に管理監督者性や固定残業代などの論点がある事案の場合、労働基準監督者は十分な検討なく会社に有利な計算での是正勧告を行う場合もあり、注意が必要です。

 

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