残業代請求,不当解雇などの労働事件が話合いで解決しない場合,訴訟や労働審判などに移行することとなります。

簡易裁判所が担当となる一部の少額事件を除き,まずは地方裁判所で裁判を受けることになりますが,担当する裁判官は,労働事件に詳しいのでしょうか。

1 大都市の裁判所と地方の裁判所

大都市の場合,労働事件を担当する裁判官は,労働事件に詳しいものと期待できますが,地方の裁判所の場合,裁判官によっては必ずしも労働事件に精通しているとは限りません。

なぜなら,大都市の裁判所では,「労働専門部」,「労働集中部」という労働専門の部署で労働事件を集中的に取り扱っているので,担当裁判官の知識,経験が一定水準以上となっているのに対し,他の裁判所では,労働事件だけを取り扱うような裁判官はおらず,他の一般事件と同様に持ち回りで担当裁判官に割り振られているため,労働事件の経験の少ない裁判官が担当になってしまう場合もあるのです。

2 労働専門部,労働集中部

労働専門部とは

具体的には,東京地裁,大阪地裁では,労働事件だけを専門に取り扱う「労働専門部」が設置されており,労働事件が比較的スムーズかつ専門的知見をもって審理されています。

労働集中部とは

横浜,さいたま,千葉,京都,神戸,名古屋,広島,福岡の各地裁では,労働事件以外の事件も取り扱いますが,労働事件についてはその部署が集中して担当するという「労働集中部」が設置されています。東京,大阪の労働専門部ほどではありませんが,これらの地裁の労働集中部でも,労働事件について専門性の高い裁判官が事件を担当することになります。

当事務所は労働事件を多く扱っていますので,東京地裁,大阪地裁の労働専門部には毎日のように弁護士が通っています。労働専門部のある東京地裁13階では,所内の他の弁護士にばったり出くわすことがしょっちゅうあります。また,労働専門部の各裁判官が,それぞれの事件でどのような判断をしているかを分析するなどの研究も行っております。

3 労働事件に詳しくない裁判官

その他の地方裁判所の場合は,専門部,集中部はありませんので,それぞれの裁判官の経験や知識にはどうしてもばらつきがあります。

では,万が一,労働事件に詳しくない裁判官に当たってしまった場合,どうすればいいのでしょうか。

担当裁判所が労働事件に詳しくないとしても,その条件は,労働者側だけが不利なわけではありません。その悪条件は労働者側,会社側とも同じです。
そのような場合は,我々が,最新の判例の情報などを適切に裁判官に情報提供し,有利な判断が得られるようにいたします。こういうケースで,裁判所をいかに説得していくか,というのも日頃労働事件を多く取り扱っている弁護士の腕の見せ所だと思います。場合によっては,都市部の労働専門部では取れないような有利な条件を引き出すことができる場合もあります。