「会社側から能力不足を理由に残業を命じられているが、残業代は支払われていない」

「仕事が遅いから、残って業務をこなすように言われている」

このように、会社側から能力不足を理由に、時間外の労働を強制されていませんか。労働者側にとって、会社側から能力不足を言い渡されることは大きなストレスの上、責任感を感じてしまい残業せざるを得ないと思ってしまうかもしれません。

残業代請求に対し、会社側から、稀に「他の従業員は同じ仕事をして定時に帰宅している。残業をしていたのは他の従業員よりも仕事が遅かったからに過ぎない。」といった反論がなされることがあります。

では、実際には能力不足を理由にすれば、会社側は労働者側にサービス残業を命じることはできるのでしょうか。

この記事で詳しく解説します。

 

サービス残業は違法

時間外労働や休日労働に従事したにもかかわらず、賃金がもらえないことを「サービス残業」と呼びます。

労働基準法では時間外労働や休日労働に対しては、割増賃金を支払わなければならないと定められており、賃金を支払わないサービス残業はいかなる理由でも違法です。

 

「能力不足」を理由としても残業代の未払いは認められない

では、あなたの能力不足を理由にサービス残業を指示される場合は、どうでしょうか。

会社側(使用者側)から「能力不足」を理由にサービス残業を命じられた場合、「やむを得ない」「自分が悪い」と感じてしまう方も多いかもしれません。

しかし、能力不足であることはサービス残業をさせていい理由にはなりません。

前述のとおり、残業に対しては残業代が支払われなければいけないと労働基準法で定められているためです。どのような理由でもサービス残業は違法です。

したがって、会社側に能力不足を理由にサービス残業を求められても、ご自身を責める必要は全くありません。

もしも、すでにサービス残業をしている場合は、過去にさかのぼって3年分は残業代を請求できますので、すぐに残業代の回収に向けて行動を起こすことをおすすめします。

 

会社からの指示がないサービス残業

ご経験がある方も多いかもしれませんが、企業全体が「サービス残業体質」となっており、多くの従業員が当たり前のようにサービス残業をしていることがあります。

入社後、このような環境に長く勤務していると、サービス残業をすることに慣れてしまうかもしれません。

では、会社からの指示がない場合も、サービス残業は違法でしょうか。

結論から言うと、黙認されているケースは「違法」となります。

従業員が慢性的にサービス残業をしているということは、それだけ多くの業務を課している企業側に大きな責任があります。

悪い企業体質を見直さず、漫然とサービス残業に目をつむっている以上、未払いの残業代は支払われる必要があります。

黙示の残業命令によるサービス残業は違法

営業成績に追われていたり、納期に間に合わなかったりするなどの理由で、会社から直接的に残業を指示されていなくても、以下に挙げるような言葉は残業を迫る言葉になる可能性が高いです。

「必ず目標達成するように」
「このままでは間に合わない、どうするべきか考えてほしい」
「明日までに結果を出せ」

このような言葉を上司や社長から言われたら、多くの労働者はサービス残業を行ってしまうでしょう。

このような言葉は黙示の残業命令であり、会社側からサービス残業を求める違法な行為です。

もしもこうした言葉によって仕方なく残業している場合は、未払い残業代の請求ができる可能性が高いです。

 

自主的に行っているサービス残業

では、労働者側が自主的にサービス残業を行っている場合は、未払い残業代の請求はできるでしょうか。

例えば、「朝早い時間の方が、仕事に集中できる」という理由で始業前に業務を開始したり、家の方が集中できるからといって仕事を家に持ち帰ったりしているケースです。

このようなケースでは、会社からの明確な指示や黙示の残業命令もなく残業していると考えられるので、残業代の請求は認められない可能性が高いでしょう。

また、会社によっては「残業禁止」を就業規則などで定めている場合があります。

この場合も、許可なく残業を行っていたら、未払い残業代が支払われない可能性が高いです。

もっとも、こういったケースでも、実際の運用として、許可なしでの残業が横行しており、許可制が形骸化している場合は、残業代の請求が認められることとなります。

サービス残業の残業代は要らないと考えている場合

サービス残業をする方の中には「残業代は要らないから業務を終わらせたい」という考えでサービス残業をされる方もいるでしょう。

しかし、冒頭で述べたように残業には残業代を支払わないといけません。

労働者本人が残業代を求めているかに関係なく、残業代を支払わずに残業をさせている企業は違法行為を行っていることになってしまうのです。

 

サービス残業の対処法

サービス残業を求められている場合、労働者側としては一体どのように対処できるでしょうか。

たとえ能力不足を理由に求められていても、サービス残業は違法です。以下に挙げる対処法をご検討ください。

対処法1 会社や労働組合に相談する

会社に従業員向けの「コンプライアンス窓口」が設置されている場合、残業に関して相談できます。

直属の上司にサービス残業を求められている場合、こうした部署に相談することで社内環境が改善できるケースもあります。

労働組合への相談も1つの解決策です。

企業内の労働組合や社外の合同労組などに相談することで、団体交渉を使ってサービス残業の解消など労働環境の改善を求められます。

対処法2 サービス残業を告発する

サービス残業が改善されない場合、労働基準監督署にサービス残業を告発することも視野に入れましょう。

労働基準監督署へ告発すると、会社側に訪問や立ち入り調査などを行い、是正勧告や改善指導によって、企業のサービス残業体質を改善するように求めます。

労働者側が自力で会社側に交渉するよりも高い効果が期待できますが、告発をすれば必ず調査が行われるとは限らないため、その点は認識しておきましょう。

対処法3 未払い残業代を請求する

未払い残業代が発生している場合、請求をすることで解決を目指しましょう。

未払い残業代は残業の事実を証明する証拠を確保し、未払い残業代の金額を計算した上で、会社側に請求します。泣き寝入りをせずに、まずは請求することを検討しましょう。

対処法4 弁護士に相談・依頼する

未払い残業代の請求は、まず会社側と交渉を行うことからスタートするのが一般的です。

しかし、会社によっては残業を認めず、交渉に応じない可能性もあります。

そんな時こそ、弁護士に相談や依頼をすることがおすすめです。

請求に向けた事前準備や手続きをサポートしてくれ、法的知識をもとに代わりに会社側と交渉も行うことができます。

 

まとめ

この記事では、能力不足を理由に強制されるサービス残業について、その違法性や対処法について詳しく解説しました。

会社側から能力不足を指摘された場合、労働者の多くは責任を感じてサービス残業に応じてしまうかもしれません。

しかし、サービス残業は違法であり、本来応じる必要はないものです。

すでにサービス残業を行っている場合は、未払い残業代の請求を検討しましょう。

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監修弁護士

勝浦 敦嗣(かつうら あつし)監修者:勝浦 敦嗣(かつうら あつし)
所属:第二東京弁護士会所属
-監修コメント-
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