30代の男性からのご依頼でした。当初はご自身で社会保険労務士に依頼して,残業代を計算し,会社に内容証明郵便で請求を行っていたのですが,会社からは残業代は発生していない旨の回答しか得られず,社会保険労務士にも諦めるように言われてしまい,当事務所にいらっしゃいました。

ご依頼いただいた翌日,当方から会社に再度通知書を出しましたが,会社からは何の反応もありませんでした。そこでやむを得ず,ご本人の記憶と一部保管していたタイムカードを元に推定計算で請求額を算定し,裁判所に提訴しました。

そして,訴状の中で,被告が開示を拒んでいることを裁判所に伝え,タイムカードや就業規則などを開示するように求めました。
相手方に弁護士がつき,まずは弁護士からタイムカードなどが開示されました。

それを元に正確な残業代を計算して,訴えを変更して本来請求できる額の裁判に修正しました。
訴訟において相手方からは,一部の手当は残業代として払われたものである,タイムカード上は働いていたとしても19時以降の残業は必要がなかった,変形労働制が導入されている,などという主張が出されました。
しかし,いずれの論点も,法律上は相手方の主張が成り立つ可能性の低いものであり,そのことを指摘したところ,当方の主張額を前提に和解交渉が進み,提訴後3ヵ月で200万円の支払を受けることができました。

監修弁護士

勝浦 敦嗣(かつうら あつし)
執筆者:勝浦 敦嗣(かつうら あつし)
所属:第二東京弁護士会所属
-【弁護士からの一言】-

1 稀に,会社がタイムカードなどの開示に応じない場合があります。

その場合,当事務所では,推定計算で訴訟を提起したうえで文書提出命令を申し立てたり,民事訴訟法132条の2に基づく照会制度を活用したりして会社を追及し,逃げ得は認めない姿勢で進めてまいります。

2 訴訟において会社から変形労働制が導入されている旨の主張がなされることがよくあります。

しかしながら,多くの会社では,変形労働制が適法に導入する手続がなされておらず,無効となるケースが多いです。

3 ご自身で請求されるケースもありますが,その場合には時効の中断についてきちんと行えているかを注意してください。

できれば当初から弁護士にご依頼いただいた方が,適切な処理が可能となりますし,解決までも早いと思います。