建設業界は、人手不足という問題を抱えています。
新しく建設業に入る若手は少なく、職人の少子高齢化は深刻化し、その就業者数はピーク時から約28%減少しました。(注1)
人手が足りず、労働者に大きな負担を負わせている現場は、決して少なくはありません。中には、長時間労働に従事している方もいるでしょう。
しかし建設業界では、その何重もの請負構造により十分な人件費を確保できず、時間外労働を強いている労働者に対し、きちんと残業代を支払っていない事業者が存在します。
このような場合、労働者が会社に残業代を請求することはできるのでしょうか。
そこで今回は、建設業における残業時間の上限や残業代が出ないことの合法性、未払い残業代請求の対応について、わかりやすく解説します。
目次
建設業界の残業時間の上限
日本では、労働基準法による、労働時間・残業時間の上限規制があります。
その上限は、次のとおりです。
【労働時間の上限】
1日8時間以内・1週間40時間以内
【36協定締結時の残業時間の上限】
1ヶ月45時間以内・1年360時間以内
【臨時的な特別の事情がある場合の残業時間の上限】
1年720時間・複数月平均80時間以内(休日労働含む)
1ヶ月100時間未満(休日労働含む)
1ヶ月45時間を超えられるのは年間6ヶ月まで
労働基準法では、1日8時間・1週間40時間が労働時間の上限とされていますが、36協定を締結し必要書類を労基署に提出した場合のみ、これを超えて労働者に時間外労働をさせることが可能です。
ただし、この場合の残業時間にも、上記の上限は定められています。事業者は必ずこれを守り、また規定の割増率を適用のもと、労働者に残業代を支払わなければなりません。
2024年3月末まで、建設業の残業時間の上限規制は適用除外とされてきました。
しかし、2024年4月からは、建設業も他の業界と同じように、残業時間の上限規制が適用されています。
建設業界で残業代が発生しやすいケース
建設業も他の業界と同じように、所定労働時間(会社で決まっている労働時間)・法定労働時間を超えて働いた場合には、残業代が発生します。中でも、法定労働時間を超えた労働については、会社は割増率を適用した残業代を支払わなければなりません。
法定労働時間を超えた労働(残業)の割増率は25%ですが、それが深夜労働の場合は50%、1ヶ月の時間外労働が60時間を超過していた場合も50%など、状況によって割増率は変わるので注意しましょう。
現場で所定・法定労働時間を超えて作業をした場合はもちろん、定時後に事務所で事務仕事を行った場合、始業前に機材の準備や安全点検を行った場合なども、残業代の支給対象になると考えられます。
建設業界の残業の証拠
前述のとおり、建設業でも、労働者が所定・法定労働時間を超えて働いた場合には、会社は残業代を支払わなければなりません。
それにも関わらず、これまで残業代を受け取れていなかった場合には、労働者は時間を遡って、会社に未払い残業代を請求することが可能です。
ただし、未払い残業代の請求には、残業の事実を証明する証拠が必要です。具体的には、次のようなものが証拠として有効です。
・タイムカード
・会社用パソコン等のログ
・業務日報
・就業規則
・雇用契約書
・給与明細
タイムカードやログ、日報からは、実際の労働時間を確認することが可能です。特にパソコンやタブレットを用いた業務が多い方は、そのログが有力な証拠となるでしょう。
また、就業規則や雇用契約書は残業の取り扱いルールの確認に、給与明細は残業代が支払われていないことの証明に必要です。
もし上記の証拠を用意できない場合には、次の書類やデータも残業の証拠となる可能性があります。
・業務メールの履歴
・Googleマップのタイムライン機能
・会社や事務所のセキュリティ解除・設定記録
・施主・元請け業者等に提出した作業報告書
・社用車に搭載したETCの利用記録
・危険予知活動(KY活動)実施の記録
・始業・終業時刻・業務内容を記載したメモ
証拠は多いに越したことはありません。業務時間やその内容がわかるようなものは、なるべく多く確保し、証拠として保管しておくようにしましょう。
建設業界の残業代に関するよくある質問
建設業界の残業代に関しては、次のような点を疑問に思う方が多いようです。
・「施工管理者」「現場監督」にも残業代は出るのか
・退職後でも残業代請求はできるのか
ここでは、上記2点について解説していきましょう。
「施工管理者」「現場監督」にも残業代は出る?
建設業界では、「施工管理者だから」「現場監督だから」という理由で、残業代が出ないケースがあるようです。
しかし、「施工管理者」「現場監督」といった役職名は、残業代の支給・不支給には関係ありません。
会社が残業代を支払わなくて良いのは、「対象の労働者が法律上の管理監督者に該当する場合」です。そして、「管理監督者かどうか」は、役職名ではなく、業務実態から判断されます。
その要件は次のとおりです。
【管理監督者の要件】
・事業主の経営に関する決定に参画し、労務管理に関する指揮監督権限が認められている
・自己の出退勤をはじめとする労働時間について裁量権を有している
・一般の従業員に比しその地位と権限にふさわしい賃金上の処遇が与えられている
上記の3要件を全て満たしている場合、その労働者は法律上の管理監督者に該当するため、残業代を受け取ることはできません。しかし、上記の3要件のいずれかを満たしていない労働者は、残業代を受け取ることができる可能性が高いです。
要件を満たさない労働者に対し、会社が役職を理由に残業代を支払わないことは違法です。この場合、労働者は未払い残業代を請求することができます。
退職後でも残業代請求はできる?
残業代の不払いに遭った方の中には、会社を退職してから、それまでの残業代を請求したいと考える方もいるでしょう。
結論を述べると、退職後であっても、時間を遡って残業代請求を行うことは可能です。「退職してしまったから」と、請求を諦めることのないようにしましょう。
また、未払い残業代には遅延損害金が発生します。遅延損害金の年率は、在職中は3%または6%ですが、退職後は14.6%です。遅延損害金の率が上がることを考えると、退職後の残業代請求は労働者にとって有利だといえるでしょう。
残業の時効は3年
既に述べたとおり、退職後に残業代請求を行うことは可能です。
ただし、残業代請求に時効がある点には注意しなければなりません。時効を過ぎた場合、請求権は消失してしまいます。
残業代請求の時効は、3年です。
ただし、内容証明郵便の送付によりこの時効は一時的に停止させることができます。時効が迫っている場合には、早急に会社へ内容証明郵便の送付を行いましょう。
未払いの残業代請求を弁護士へ依頼するメリット
未払い残業代請求は、労働問題を取り扱う弁護士に相談・依頼することをおすすめします。弁護士に依頼することで、依頼者は次のメリットを得ることができます。
(1)会社とのやり取りを任せられる
未払い残業代の請求にあたっては、内容証明の送付や交渉など、会社とのやりとりが生じます。しかし、自分で会社の担当者とやり取りを行うことに抵抗を感じる方は少なくないでしょう。
弁護士に依頼すれば、会社とのやり取りは全て任せ、自分の負担を軽減することが可能です。
実際に、勝浦総合法律事務所で残業代請求をされたお客様からも、「まかせっ放しにできてよかった。相手方と一切関わりたくなかったので、お任せして何の不安もなく問題が解決でき大変助かりました。」とのお声をいただいています。
会社と直接関わらずに請求手続きを進められる点は、弁護士に依頼する大きなメリットでしょう。
(2)残業代が支払われる可能性が高くなる
弁護士は、豊富な知識や経験を生かした残業代請求のノウハウを持っています。このノウハウをもって手続きを行えば、当然残業代請求が成功する可能性は高くなるでしょう。
また、弁護士が入ることで会社側の問題意識が改善される可能性もあります。
弊所で残業代請求をされたお客様からは、「この度は長期に渡り対応いただきありがとうございました。途中、もっと少ない金額を想定しましたが、最終的に、横山(弁護士名)さんのおかげで増えました。本当にありがとうございました。お疲れ様でございました。」というお声もいただいています。
弁護士に依頼することで残業代請求の成功確立は上がり、時には支払額の増額まで可能になるのです。
(3)証拠集めのサポートを受けられる
既に述べたように、未払い残業代請求には、残業の事実を証明する証拠が必要です。
しかしこの証拠集めは、一般の人にとって簡単ではありません。特に既に退職している場合、証拠確保のハードルは高くなってしまうでしょう。
弁護士への依頼では、証拠集めのサポートを受けられる点も大きなメリットです。証拠が少なくても、会社への開示請求によってより多くの証拠を見つけてもらえる可能性もあります。
勝浦総合法律事務所で残業代請求をされたお客様からも「少ない資料だったのですが、色々情報を集めていただき、良い結果を出していただきました。有難うございました。」というお声をいただいています。
弁護士のノウハウを生かせば、有力な証拠を確保できる可能性は高くなるのです。
(4)労働審判や裁判の手続きも依頼できる
会社との交渉が決裂した場合、手続きは労働審判や裁判へと移ることになります。しかし、労働者自身が労働審判や裁判で主張や立証を行うことは極めて困難でしょう。
弁護士に依頼すれば、交渉が決裂した後の対応も任せることができます。これにより、労働者自身の負担や不安は軽減されるでしょう。
弊所で残業代請求をされたお客様からも「初めての裁判で何も解らない私に事前の説明、定期的な裁判の進捗状況をお伝えいただきとても親身に感じました。私の周りで困った方が居た場合、勝浦法律事務所様を紹介しようと思います。本当にありがとうございました。」というお声をいただいています。
初めての労働審判や裁判でも安心して手続きを進められる点も、弁護士に依頼するメリットです。
未払い残業代の請求は勝浦総合法律事務所へ相談を
2024年の法改正により、建設業にも労働基準法における残業の上限規制が適用されることになりました。建設会社は、これを超えて労働者に労働させることはできません。
また残業にあたっては、その労働者が管理監督者に該当する場合を除き、会社は必ず労働者に残業代を支払う必要があります。残業代が出ない場合、労働者は会社に未払い残業代を請求することを検討しましょう。
未払い残業代の請求手続きは、勝浦総合法律事務所へご依頼ください。当事務所は、年間7.8億円の回収実績を持つ、残業代請求に強い法律事務所です。
相談料0円・完全成功報酬型なので、初期費用無料でご依頼いただけます。
残業代は正当に貰う権利があるもの。
諦めず、まずはお気軽にご相談ください。
また、当事務所への依頼をご検討中の方は、残業代請求に成功した事例もぜひご覧ください。
【参考資料】
(注1) : 国土交通省「建設産業の現状と課題」
監修弁護士
執筆者:勝浦 敦嗣(かつうら あつし)
所属:第二東京弁護士会所属
-監修コメント-
「解決したはいいけど、費用の方が高くついた!」ということのないように、残業代請求については初期費用0円かつ完全成功報酬制となっております。成果がなければ弁護士報酬は0円です。お気軽にご相談ください。