テレビの制作会社におけるディレクター・AD等の仕事は、連日の残業が続くハードな勤務となることが多いようです。
当事務所でも、制作会社のディレクターやADの方から、残業代請求をご依頼いただき、多額の残業代を獲得できた経験が複数ございます。
1 ディレクターと裁量労働制
テレビ制作現場におけるプロデューサーやディレクターは、専門業務型裁量労働制の対象となる業務の一つです。
ディレクター職にある方が残業代請求をする場合、制作会社からは、裁量労働制の対象だから残業代は発生しないとの反論がなされることがあります。
しかし、対象となる「ディレクターの業務」とは、スタッフを統率し、指揮し、現場の制作作業の統括を行う業務ですので、実態として、そのような統括業務を行っていない方は、いくらディレクター職にあったとしても、裁量労働制の対象ではありませんので、残業代請求が可能です。
また、裁量労働制を適法に導入するためには、適法に選任された労働者代表と労使協定を結ぶことが必要ですが、労働者代表を会社が一方的に指名するなど、適法が手続きによって労働者代表が選任されていないケースも多く、そのような場合は、手続きの欠陥により、裁量労働制の無効を主張することもできます。
2 労働時間の立証
制作会社によっては、自社でのタイムカードなどが存在しない場合も散見されます。
その場合、勤務先のテレビ局の入退館記録などによって労働時間を立証するなどの工夫が必要となります。
テレビ制作会社(ディレクター・AD等)の未払い残業代の解決事例
制作会社ディレクター
訴訟の結果、800万円の残業代を支払う内容での和解が成立しました。
会社側は、ディレクターであることを理由に、裁量労働制が適用されると主張しましたが、適法な手続きがなされていないこと等を主張した結果、上記内容での和解が成立しました。
制作会社ディレクター
会社側は、給料に残業代が含まれているとの主張を行いましたが、固定残業代としての要件を欠くことを主張した結果、訴訟において、750万円の残業代を支払う内容での和解が成立しました。なお、労働時間についても争いがあったため、テレビ局の入退館記録などに基づいて労働時間を立証しました。
制作会社AD
テレビ局の出勤表管理台帳に基づいて労働時間を立証したうえで残業代を請求した結果、任意交渉において350万円の残業代を支払う内容での和解が成立しました。
制作会社ロケバス運行管理者
制作会社のロケバス運行部門での運行管理者。
会社側は管理監督者であるから残業代は発生しないと主張しましたが、訴訟の結果、管理監督者に該当しないことを前提に、700万円の残業代を支払う内容での和解が成立しました。